隠元禅師より伝わりし普茶料理とは?オーバーツーリズム関係なしの黄檗で体感せよ! 萬福寺 黄龍閣(宇治市・黄檗駅)

ついったの相互フォローの方に「涼しくなったら京都普茶料理でも食べませんか」と言われたのを思い出しました。社会性に欠けるわたくしは社交辞令を真に受けること北関東一。「秋なので行きましょう」と連絡を入れてみる‥おや言ってみるもんだ、OKだって。よし、予約予約〜。

獅子文六の「黄檗料理」という随筆で萬福寺の普茶料理について書いてあったので、一度食べてみたかったんですよ。参詣はしたことあるけど料理はいただかなかった。

知っている情報ですと、普茶料理とは隠元禅師が中国から伝えた精進料理だそうです。煎茶道の開祖たる方だけに、お茶と供する接待料理ということですが、さて。

さて予約の当日、宇治の「萬福寺」さんに到着です。紅葉ど真ん中のため東福寺駅あたりは大騒ぎでしたが、同じ奈良線でもこちらは見事に静かなもの。ご覧の通りランタンフェスタなんかもやっているのになぜだろう。

ついったで準公式アカウントが誰も来ない自虐を振りまいていますので必見。

いやしかし結構スゴいよ?ランタン抜きでも建物とか仏像も素晴らしいのに、閑散としている理由がちょっと分からない‥紅葉は控えめだからかな。みんな黄檗といえばたま木亭さんにしか用がないのかしらね。

名物の一つ、開梛。叩いて時報として使うもので木魚の原型とか。口のあたりに今の木魚っぽさがありますね。

普茶料理をいただくのは開梛の近くにあります「黄龍閣」さんです。スリッパに履き替えて予約名を告げます。そうそう、普茶料理は予約制。料理とは別に拝観料500円も支払います。お寺自体500円どころじゃない価値があるので問題ありませんが、いちおう注意。

案内していただいたのは圓明の間。圓明といえば宮本武蔵‥はて、沢庵和尚は黄檗宗だったかしらとか思ってしまう吉川英治史観どっぷりマン。

本日お願いしたのは特別普茶料理6,600円のコース。3,300円の普茶弁当なんかもあるそうですが、普茶料理の特徴である皿盛りはこちらからだそうです。

他の普茶料理のお店では皿盛りは4名からが多いところ、萬福寺さんは2名からOKというのも嬉しい。

あれれ、お酒が山門に入っちゃってるじゃないのけしからん。本日のお酒を願います‥と言いたいけど今日帰るんだ。お茶とあわせるのが本来だし、なんだか安倍晴明っぽさのある玉兎をお願いします。

「ぎょくと」でなく「たまうさぎ」であったか。どんだけカテキンを封じ込めたのか、ものすごい旨味と深い甘味。夏に山道を歩いたあと一杯飲みたい極上の玉露ですね。

普茶料理は普く(あまねく)大衆と茶を共にするというわけで、大皿に盛った料理をみんなで仲良く分けて食べるものだそうです。取り箸はなく各々の箸で、2つだけの取り皿でいただくのだとか。心の狭い新聞記者が怒り出しそう。

感染症がアレの時はそんなスタイルで供するわけにもいかず、お弁当だけだったみたいです。

まずは筝羹(しゅんかん)と麻腐(まふ)。素晴らしい、2人前でもこの映えっぷり。本来の4人以上だったら歓声が上がること間違いなし。なんかお節料理みたいな雰囲気もあるわね。

麻腐とはなんぞやと言えば、精進料理でおなじみ胡麻豆腐の原型だとか。知っている胡麻豆腐よりもはるかに弾力があり、胡麻の風味も濃厚ですごくおいしい。原型と言うだけに作り方が違うのかしら。

ちなみに獅子文六先生、コレだけはすごく褒めていますが、他の料理は結構けちょんけちょん‥星で言えば2くらいの辛辣なレビューなんですよね。日本式の精進料理は好きなはずが、黄檗式は何が気にいらなかったんだろ?なんて考察も兼ねて来たのでした。

普茶料理の華という筝羹は本当に華。この華やかさは大皿だからこそで、お弁当のみの時期が終わって本当に良かった。

11時方向、これはきっと欠かせない隠元豆のきんぴら!隠元禅師が本邦に伝えしお豆さんを隠元禅師が開いた萬福寺でいただく‥本場モノどころの話じゃないぞ。

その右、12時方向の白いものは大根の酢の物に見せかけた馬鈴薯の酢の物ですって。

精進料理といえば肉もどき魚もどき料理が有名ですが、野菜に擬態させる必要ってある?とか言いつつ食べてみれば、シャッキシャキでどう考えても大根だよ、面白いなあ。梨もどきバージョンもあるみたいです。

真ん中辺の椎茸みたいなのも何かの擬態かな〜なんて話しながら食べてみたら、そのまんま椎茸で逆にびっくりだよ。

かまぼこもどきはなんと長芋。赤い揚げ湯葉みたいなモノが巻かれて味付けと擬態を兼ねています。見た目かまぼこなのに食感は長芋のシャキシャキ。味はごくごく控えめ。とにかく初めての摩訶不思議な食べ物。

右のナス田楽は生麩とかかな?と食べてみれば、そのまんまナスだった。擬態させる基準がイマイチ分からんけど、珍しくて面白いからヨシ!

次は油茲(ゆじ)。いわゆる天ぷらですが、衣に味がついていて半ば唐揚げといった風。甘く煮られたリンゴや赤蒟蒻まで揚がっているのが驚きだ。

特に面白いのがこのお三方。左は桜海老のかき揚げに見せかけて紅生姜とコーン!これは見事に化けましたね。立ち食いそば等の紅生姜天と違って、ほんのり甘さすら感じる刺激控えめの謎生姜。水でさらしてから甘い味をつけたりしているのかなあ?

真ん中は焼売もどき。なるほど見た目は焼売そのまんまだけど‥なんとなんと、甘く煮含められた高野豆腐にアーモンドの衣!カリッと来てクニュっと来て、これまた甘い。全く脳内ライブラリにない未知との遭遇。

右はまさかの梅干し天ぷら。さぞ酸っぱかろうと思えば、またまた甘いんです。3日くらいシロップのようなものに漬け込んであるとか。

どれも味付けが淡くて甘くて、揚げ物が多いので油が強い。つまり本当にお茶向きで、見事なまでにお酒を呼ばない感じです。呑み助の獅子先生はその辺が気に入らなかったのかも‥?

雲片(うんぺん)は揚げ素麺に野菜のアンをかけたもの。やたらイケメンなお坊さんの説明によると、料理に使って残った野菜の切れ端を使う元祖SDGs料理なんだそうですよ。

いただいてみると‥皿うどん!お前皿うどんじゃないか!ここで初めて「知っている味」に出会った感がすごい。でも味付けはやはり薄いというか淡いレベルなので、金蝶ソースが欲しくなったのは秘密。

食事の飯子(はんつう)と汁物の寿免(すめ)。漬物は醃菜(えんつぁい)というそうです。ヒョウタンの柴漬けが面白おいしくてお土産に買ってしまいました。

本日の飯子は栗ご飯。こちらは甘味を添加せず、本当に栗の素朴な甘さだけなんですね。分かりやすくおいしい。

寿免は湯葉と三つ葉、そして雲片に続いてこちらにも葛が使われています。このトロみのおかげで出汁が舌に絡んで、淡いながらもしっかり旨みを感じさせてくれる。この上なく胃に優しくて、毎朝でも欲しい滋味滋養。

寿免とヒョウタン漬けと卵かけご飯の朝食なんて最高なんじゃないだろうか‥自宅なら卵はアリだしね。しかし植物ばかりでこんな出汁を取れるウデマエはない。永平寺の近くで精進出汁パックを買っておけばよかった。

水果(すいご)なんてデザートまであるのですね。ほうじ茶団子栗羊羹、ここではっきりとした甘さに出会って素直においしい。茶団子も売店にあったので買いました。

ごちそうさまでした。品数たっぷりで油も多めのはずですが、胃にダメージを感じないのはさすが精進料理というところ。

麻腐・雲片・寿免が心に残ったなあ。獅子先生、黄檗料理おいしいよ。雲片と寿免のランチセットとか近所の中華屋さんで出したら通ってしまいそう‥あ、でもやっぱり塩分濃度は娑婆のソレでお願いします。

それ以外のものは普段の食習慣と違いすぎて‥

濃厚な刺激に慣れてしまった舌には捉えきれない枯淡な味が文字通りの禅味なのだろうか。とにかく他では味わえない貴重な体験だなあ‥というところ。湯葉・生麩・葛がふんだんに使われて、食感のテーマパークみたいな楽しさはあります。

個室を出て開梛のレプリカを見ていたら、先ほどのイケメンなお坊さんが色々説明してくれました。口の丸いのは何かを食べているわけではなく、煩悩を吐き出しているところなんですって。

グンマから来たと告げると、高崎の達磨寺で行われる正月七草大祭に参加するからよろしくとのこと。なんと達磨寺とは黄檗宗つながりで親交があるそうで。来年は久しぶりにダルマさんでも買いに行こうかな。

食後は境内を少し散策。もう公開時期は終わってしまいましたが、寺宝の曼荼羅図がものすごく‥すごかったです。本当にすごく良い所なのになぜ人がいないんだろ。「オーバーツーリズム?何それ」状態の萬福寺、非常にオススメです。近くでおいしいパンも買えるしね。

萬福寺 京都府宇治市五ケ庄三番割34

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