金沢うまいものツアーに行った方から「予約困難なお寿司屋さんの枠があるけどいかがですか?」とありがたいお誘いが来ました。
あのツアーの方がオススメするお店なら、他に用事があろうがなんだろうが駆けつけます。きっとその価値はある。実は常にヒマとかそういうわけではありませんよ。
当日となり、やって来たのは恵比寿駅。西口を出て南側の坂道を登り、チラホラと飲食店があるあたり‥Googleマップではこの辺なんだけど‥あ、ここかな?
サントリー自販機の脇にある細い道から入って2階にありますのが「すしさとる」さん。8月8日に同じ恵比寿から移転したばかりだそうです。
18時からと20時45分からの1日二部制。おまかせコース22,000円くらいらしいです。この日は遅い時間の方でした。
つけ場を囲むような馬蹄型のカウンターは全10席程度。基本は8名までだとか。今回は6名貸切。金沢ツアーとほとんど変わらないメンバーです。
まさしく白木なカウンターには箸・ナプキン・コースター、そして指拭きまでがしっかり準備されています。寡黙な職人さんがひたすら握ってくれるストイックなお店‥とは、この頃までは思っていました。
おまかせコースなので注文はドリンクのみ。日本酒やワインはメニューなどはなく、大将が次のネタやお客の雰囲気で選んでくれるみたいですね。まず出てきたのは会津の冩樂 純米。これは出されて困る人いない。ズルい。
大将「一品めはナスを煮て揚げたものです。おいでナスということで、本日はよろしくお願いします」
いきなりダジャレ‥と思ったら、この後がとんでもなかった。とにかく何をしゃべってもダジャレにしてしまう、臨機応変マンみたいな大将。元プロボクサーということですが、パンチよりダジャレのラッシュがすごい?
よりによってメンバーに大阪出身の方がいたので大変、ラップバトルが始まりそうな雰囲気です。
バトル開戦を横にお寿司をいただきましょう。人肌より少し温かいご飯に白だし風の味が染みたナス。う〜むうまい。名刺がわりの握りでお寿司の切れっぷりが分かりました。ダジャレの切れはこれから‥
お造りで出たのは宮城のヒラメ。梅の風味が効いた煎り酒とワサビでこの上もなくサッパリいただけます。
お酒をキュッと飲み干すと素早く店員さんが来てくれます。お次の大将セレクションは新潟の山城屋。なんと綺麗なお酒でしょうか。This is 新潟!
「クエを食え」的なことを言っていましたが、実はスズキですと種明かしがあったような?とにかく白身の揚げ出し。ふわふわの魚はもちろんのこと、出汁がうま〜い!大根おろしが残る出汁を飲み干してしまいたい。
「その器だと服に全部飲ませてしまいますからね」と木のスプーンを配ってくれる大将。やさしい。
焼き物は太刀魚と万願寺とうがらし。香ばしさこの上ない皮に黒七味が似合う。ひと口ごとにお酒が必要で困っちゃいますね。
また新潟ですね。根知男山 純米吟醸 五百万石 無濾過生原酒!えへへ、希少なところをありがとうございます。新潟っぽい淡麗なようで、無濾過生の甘味やパワーも感じる。好きだなあコレ。
おっと、ここで麺ですか。冷たいハマグリの葛そうめん。冷たい貝出汁にキュッと腰の決まったそうめんだと‥?こんな夏に好適な肴があっていいのか。
素晴らしく美味しいし、大将のダジャレライブは止まらない。本当に何を言っても洒落ようとするのでここまで来ると楽しみになってきた。
穴子まんじゅう米衣揚げ。米衣、つまりほとんどアラレ。カリカリ香ばしい衣と穴子!これうまい、もっとください。もちろん穴子に関するダジャレが飛び出しましたが覚えちゃいません。
握りのゴング代わりにガリが置かれます。通常ガリと新生姜風の2種。スカッと辛くてこれだけで飲める。
佐渡の天領盃 雅楽代(うたしろ)日和。これまたまた新潟の希少なお酒ですが、なんでしょう、淡麗でシュッとしたお酒が好きと認定されたのでしょうか。いつも黄色いドッシリしたタイプばかりなので新鮮だ。
握りの初手はカスゴダイでした。薄い皮に繊細な白身で、なるほどこいつは黄色い酒というワケにはいかないね。
新イカ!スミイカの新子!やったー、今年はコハダの新子とご縁がなかったけど、このシン・イカで取り戻してお釣りが来ますって。
はかなさを感じるほどの歯ごたえ、蜃気楼のような甘味‥二枚づけにしないと握りにならないようなちっちゃいイカが、なぜにこんなにうまいのか。ゲソまでつけてくれて嬉しさ16倍。
江戸前の代表クルマエビですが、ここではさらに昔ながらのお仕事。なんと海老おぼろをかませた唐子づけで登場です。周りのエビの鮮やかさ、おぼろの丸い甘味。ああうまい、コレはもっと流行って受け継がれていってほしい。
ここで兵庫の播州一献 純米 超辛が出た!超辛の名に恥じぬスッキリ感ながら、コメの旨味もしっかりとしたこのお酒‥次は相当マッチョなネタが出るのでしょうか?
マッチョどころの話じゃなかった、トロ出たよトロ!フジタ水産のホンマグロトロ!そういえばまぐろ藤田と書いた胡蝶蘭がぼくの左側にあるじゃないか。
新雪のように溶けていく脂。たっぷりの脂なのに清々しい香り。もしかして、わずかに温かいご飯はこのマグロのためか。ご飯パワーで旨味が格段にアップしている気がする。
次は中トロ〜!?攻める、攻めすぎる!ついでにダジャレも攻めすぎる!
ああ、トロよりさらに香るような。脂と赤身のバランスが良すぎて困っちゃうな。
さらにさらにたたみ込むように、赤身!魚類とは信じられないほど清々しい香り、カツオもビックリな鉄の旨味。これはツマミとして理想的なお寿司じゃないか‥!な、なんて美味しいんだろう。
なんと第三のガリ、醤油で炊いたガリが出ました。マグロ三兄弟のガチムチな風味に負けないパワフルな口直しと言うか、それはすでに独立したツマミであった。
あっ、栃木の大那 超辛口純米だ。少しふるさとな北関東だ。これまた超辛口と言いつつ、当たりは柔らかくて旨味は深い、まさに食中酒。
完全に辛口好きと思われたのか、仕入れている大将の好みなのか知りませんが、とにかく辛口ナイトとなりました。甘辛は気にしない派ですが、たまにはこんな夜も大いにアリです。
完全にKO狙いで来ました、力石のアッパーをも上回りそうな中トロの漬け!
おまかせコースでこんなにホンマグロを満喫できるお店ってある?大満足だ‥終わった‥なにもかも‥
え、まだ続いちゃうんですか?寿司ドランカーになっちゃったらどうするの?
なんとここでひと口サイズの冷や汁。ガリと合わせてすっきりさっぱり、マグロ(とダジャレ)の猛ラッシュに揺れていた脳が立ち直りましたよ。
みなさんご存知福井の黒龍‥ちょっと待ってください。コレって希少にしてお高い純米大吟醸では?こんな高精米のお酒なんて久しぶりで緊張しちゃう。
綺麗、とにかく綺麗だね。九頭竜川の伏流水の清冽さをそのまま感じるようだね。
好物のサワラ、しかも炙りだ!西ではよく見るけど東ではあまりお目にかかれない生のサワラさん。江戸前から西のネタまで、全国のうまいものを網羅してくれちゃうのね。
ウニは手巻きを手渡しで。なんとたっぷり贅沢な。もちろんダジャレもたっぷり披露しながらの手渡しとなります。
店員さんがブロックからたたきあげたネギトロがボリュームたっぷりのトロたくへと進化しました。ここでニッコリ記念撮影タイム。
ちなみに料理の撮影は20,000枚まで、大将の撮影は50,000枚までに限らせていただきます、だそうです。
熱い熱い赤だしがほんのふた口分くらい。ふは〜とため息が出ます。具はジュンサイとしっかり季節ものです。
さあ出たトロたく!さびカンと並ぶ、あれば食べたい巻き物代表。
藤田のマグロのブロックを包丁で叩いた、もはやネギトロどころではない極上マグロたたき!しかもこんな太巻きなんてバチが当たらないはずがない。
焼きたて玉子でコースは終了。当然江戸前の厚焼きと思いきや、お弁当に入って嬉しい甘〜い「たまごやき」なのが楽しい。
ここで追加の希望を聞かれます。この辺がありますね〜とサクを見せてもらうと‥カツオ!おまえカツオじゃないか!今年の夏はやけに太っていて美味しいよね、ぜひ握ってください!
‥あともう少しマグロ食べたいな‥赤身も願いま〜す。
うわ〜と声が出るほど美しいカツオ。夏のカツオがこんなもっちりたっぷりしちゃって、秋に戻ってきたらどうなっちゃうの。
二回目でもあまりの香り高さに目を閉じてしまう赤身。うっとりしているところでダジャレが聞こえる‥もうね、ダジャレが聞こえないと寂しく感じる。洗脳されました。
これは面白い、お寿司のおはぎでシメ。酢飯にアンコがこんなしっくり来るとはビックリ。
およそ2時間45分に渡る独演会でしたが、握りはテンポよく出てくるし、とにかく大将しゃべりっぱなしだし、全く飽きるヒマもない素晴らしい時間でした。
大将以外の店員さんは常に目を配っていて、しかもフレンドリー。一人で初めて来たとしても全く心配いらないお店ですね。
ダジャレを聞きつついただく極上マグロが恋しくなって、一人コッソリ予約しようと思いましたが‥ワハハ、ネット予約はバッチリ埋まっているわ。一度行ったらみんなダジャレと寿司ドランカーになっちゃうのね。どうしても食べたくなったらダメ元で直電してみよう。
すしさとる 東京都渋谷区恵比寿南1丁目17-16 グランベル恵比寿V 2階