着流しの大将に一輪挿しの箸置き、これが江戸前の粋か!・・あれ、ヴィシソワーズが出るの?そこから生本マグロにぬか漬け・・なんですこの素敵な混沌は 江戸八(北区・赤羽駅)

JR不遇のグンマ民なので、都内に行く時や新幹線を利用する時は車で数十分の籠原駅からスタートしなくてはなりません。

その籠原から都内に引っ張ってくれる蜘蛛の糸が湘南新宿ラインと上野東京ライン。どちらにしても必ず通るのが・・赤羽

というわけで、赤羽の東横インをよく利用します。ここを都内のキャンプ地とする・・そうなると気楽に飲めるお店の一つや二つは欲しいわけで。開拓してみようと予約したのが

東横インを出てダイエーの北側に向かい、商店街から住宅街に切り替わったあたりにあります「江戸八」さんです。

なかなか初見殺しな佇まいに若干ひるみますが、予約しちゃったからには入らねば。ガラガラ〜、オーヤマですが。

らっしゃい!と、着流しにたすき掛けも粋な大将が威勢よく迎えてくれます。二辺で8人くらい座れそうなL字カウンターの真ん中へんに着席。

お香がほんのり香る店内、お手塩と箸と一緒になぜ一輪挿しがと思えば箸置きですか。しかも造花じゃなくて生花ですよ。うわ〜洒落ているなあ。

今回は料理と握りおまかせで一万円コース。とりあえず日本酒の冷たいところをお願いしましょう。

大将「辛いとか甘いとか旨口とかお好みは?」

あ、まずは甘めがいいですね。

大将「田酒があるけどいいかな?」

いい、いい!最高!

器を選んでと言われ、見た目でなく大きいのを選ぶミスター風情なし。

若旦那らしき方が田酒の夏限定とかを持ってきてくれました。しかも大きな片口にたっぷり!嬉しい〜。

カウンターにバサっと葉っぱを敷いて、ワサビとミョウガをパタパタと置いて、そしてマグロやタコが並ぶ並ぶ。最初の刺身からライブ感がすごい!

大将「マグロは生の本マグロでタコは東京湾のね」

ひゃ〜、マグロがいい香りだ!タコもブリブリたくましい!何か聞き忘れたけど白身も熟成感のような旨味が深くて素晴らしいなあ。ついでにワサビもうまくてこれで飲める。

若旦那が持ってきてくれたのは・・え、まさかのヴィシソワーズじゃないですか。好物ですが、まさか寿司屋で出会えるとは。歯に染み渡るほど冷たくコンソメゼリーまで入っちゃったりして、外の蒸し暑さがすっ飛んでいくようだ。

若旦那「煮魚をご用意しますけど、鯛のカブトとニシンのどちらがよろしいですか?」

そんなの鯛一択・・おや、先客の常連さんが「ナスうまいね〜」と言っている。ナスということはたぶんニシンのオトモですよね、それだ!

煮魚の前に出てきたのは、これまた夏に嬉しい冷たい煮アワビ!むっちり感を残して煮上げられた身、うますぎる肝!田酒が足りんので片口おかわり!カラシが効いたコンニャクもナイスサポートなんですよ。

今度は女将さんが登場、ぬか漬けを持ってきてくれました。コリっとかじるとさわやかな風が吹き抜ける。かき揚げでご飯が食べたくなる。こりゃうまいですね!

女将「もう何十年かわからないくらいのぬか床だからね。カラシとか煮干しとか鷹の爪とか色々入れて、もう何年も色々」

はえ〜、煮干しなんかも入れていいもんなんですか。やってみよ。

お待たせしました〜と煮魚が来ましたよ。ほらビンゴ、ニシンのオトモは立派なナス!さらに下には冬瓜と完璧じゃないか。

ニシンの油をたっぷり吸い込んだナスはとろとろウマ〜。ピリリと効くのは柚子胡椒ですか。こりゃ田酒おかわり・・あ、もう夏限定は空っぽ。

大将「田酒は山廃があるよ!」

ぜひそれでお願いします!

セリがたっぷりの香り高いクラゲ酢は酒で甘くなった舌をキリリと引き締めます。どうも辛味の使い方が達者だなあ。

大将「ここから握りますんで」

おお、いきなりドキドキするようなマグロのサクを切り出しましたよ。

出た!赤身とトロの本マグロブラザーズ!惜しみなく切られた種に小さめの酢飯、いかにもツマミな握りですね。

赤身を食べて本マグロの香りと酢飯の融合を楽しんだところを田酒で追うと・・ああ、宇宙のひもがチラッと見えた?

包丁も見事なイカと目にも鮮やかななエビ、甘い甘いと続いたところにクラゲ酢をつまんでまたキューと飲む。

大将と常連さんの話を聞きながら飲むのも楽しいじゃありませんか。52年前に赤羽寿司屋協会に入った時は百軒くらいあったけど、今は出前の需要がないからねえ。すしざんまいさんとウチと・・5軒あるかなあ?とか。

ちょっと待ってください。さらっと言ったけど、握り続けて50年以上ってことじゃないですか。

50年以上磨き続けた腕でドンドン軽快に握ってくれますよ〜。大ぶりにもほどがあるホタテに季節限定のおいしさトリガイ。途中でガリもいいけどミョウガの千切りもいい仕事しますね。

夏といえば光り物というわけでアジ!青魚ばんざーい。ちなみに新子はまだ高すぎてどうにもならないよ、だそうです。

大将「お客さんウニ大丈夫?うちのウニはみんな好きになるヤツだからね!」

えへへ、大好物です。まあまあ、こんな見事なウニをおてんこ盛りにしていただいて。間違いなくみなさん改心するであろう純粋無垢な甘味旨味。天国じゃのう。

大将「これでお決まりはおしまい、お腹はどう?」

いやはやお腹いっぱいです。でも・・

ネタケース内の真っ正面にある玉子が気になって仕方ないので切ってもらいました。ついでに芋のロックも。いや〜、甘いのにツマミになる寿司屋の玉子の謎よ。

お茶をいただいてごちそうさま。開拓一発目で味も雰囲気も素敵なお店に当たったじゃないか、よしよし。ただお酒が進みすぎて、結局2万くらいになってしまった。いわゆるカウンター寿司だから仕方ないね。

ここはたまのお楽しみということにして、もう少しお値段控えめのお店をさらに開拓だ〜。

江戸八 東京都北区赤羽2-38-3

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