普段はメシ食いブログですが、今回は即身仏の話です。もちろん仏様は撮影しておりませんので文字率高めです。
二泊三日山形〜新潟うまいものと即身仏ツアーはグンマで鴨汁そばを食べて無事終了。うまいものは一通り書きましたが、もう一つの大事な目的であった即身仏についても書かないと締まりません、個人的に。
初日にまず向かったのは鶴岡市の南岳寺さん。くら寿司砂田町店さんのすぐ近くにあります。一応電話を入れておいたので、呼び鈴を押すとすぐ本堂に迎え入れてくれました。
女性の方が蝋燭に火を灯し真言を唱え、「どうぞお線香を差し上げてください」と促してくれました。対面したのは鉄竜海上人。うつむき加減のお顔にはしっかり皮膚が残っていて、手つきは来迎印のように決まっています。紫の袈裟も鮮やかでなんとも立派なお姿。
「上人が入定されたのは明治になってしばらく経ってからですが、墳墓発掘禁止令の都合で明治元年ということになっております」
そうか、即身仏って土葬のお墓を掘るのと同じだから、そりゃ法に触れますよね。その前にそもそもがじさt‥禁止されるもやむなしだ。
「このお寺は1956年に全焼してしまいましたが、ご本尊と上人だけは無事に残ったのです」
それはもう運が良かったとかの次元でなく、明らかに神がかり‥仏がかりか。他にも貴重な話を伺い、上人直筆の書なども見せていただきました。拝観料はわずか400円。丑年ごとに替えるという上人の袈裟の切片が入ったお守りは500円でした。
南岳寺さんは鉄竜海上人の他にも有名な方が祀られています。鶴岡市が誇る‥霊能者?超能力者?スタンド使い?とにかくすごい人らしい長南年恵さん。
水木しげる先生の神秘家列伝に取り上げられたり、ムーとかそういった界隈ではよく名前が出る方です。
なるほど、公式では神がかりの超能力者という感じなのか。
そんな力はインチキであると裁判にかけられ、法廷で空瓶を霊水で満たしてみせて無罪になったというエピソードが有名ですね。
霊堂の中は水のペットボトルがたくさん供えられていました。もしかしたらお供え物でなく、霊験あらたかな万能薬として回収するのかもしれん。
次に向かったのは酒田市の海向寺さん。日和山公園の入口にあたる場所に二台分の駐車場があります。境内の前に置いても構わないみたいですが、空いていたのでこちらで。
南岳寺さんはひっそりと建っていましたが、海向寺さんは即身仏をググッと前に出しているようです。途中で看板なんかもあったような。
ご本尊は大日如来。真言宗ですからね。
本堂とは別に即身佛堂という立派な建物があります。こちらはいかにもしっかりしていて、全焼自体が難しそう。
受付で500円支払うと、来客のため詳しい説明とかできないけどよろしいですかと。大丈夫です、手を合わせることだけできれば。
海向寺さんは日本唯一、なんと二尊の即身仏が並んでおられます。海向寺一世忠海上人と九世圓明海上人。山形の即身仏はみなさん空海さまから「海」の字をもらっているとか。
ご住職が忙しいということで、女性の方が説明をしてくれました。何かの写真で見たような‥もしかしたら上人が着ている袈裟を縫い上げた方?
説明が終わり、どうぞごゆっくり拝んでくださいと社務所の方に立ち去る女性。他に二人いた参拝の方も早々に姿を消した結果、薄暗いお堂の中で仏様お二人にぼく一人。なんと生者率33%の異空間!
お二人とも漆を塗られているとかで暗い赤銅色の肌、言われなければ木像のようです。でも目のあたりは薄膜を張ったようだし歯もあるし、指の節々は見事にミイラ化して‥仏様と理解していなければ怖いよね、たぶん。
圓明海上人の手がほぼ完全な説法印になっているのに感銘を受けていると、手前に袈裟が入ったお守りや絵馬があるのに気がついた。ぜひいただいていこう‥おおっと、なんと即身仏姿手ぬぐいなんてすごい物もあるじゃないか!日本で二体も唯一なら、即身仏手ぬぐいだってきっと唯一。ぜひとも求めましょう。
翌日に向かったのは新潟県村上市の「観音寺」さん。日本最後の即身仏である佛海上人がいらっしゃいます。村上の駅や観光スポットからそれほど離れていないので、比較的お会いしやすい仏様でしょう。
庭に車を置き、とりあえず写真の看板を見ていると「お参りですか、どうぞ」とご住職が本堂の扉を開けてくれました。
「どうやら初めてではなさそうですが」
え!こちらのお寺は初めてです‥(即身仏は初めてではないことが分かるのかな?)
「そうでしたかな。グンマはどちらから」
え!そこまでお見通しとはどんな法力ですか?‥ああ車のナンバーか。
「そちらには入定の時に入っていた木棺、上の方には発掘の時の写真などありますので、後でゆっくりご覧ください。まずはお参りをどうぞ」
本堂を進んで奥の間に案内されると、目の前と言える近さに佛海上人がいらっしゃいました。
「それではごゆっくりどうぞ」
ご住職は去り、半個室に仏様と二人きり。しかも一緒にパフェでも食べようという距離。上人は頭を軽く下げながら結跏趺坐、みぞおちのあたりで合掌をされているような体勢です。こちらも合掌して頭を下げると、なんだかお互い拝み合っているような不思議な感覚。
生前の写真や肖像画が残っている方ですが、なんとなくその面影が残っているような‥優しいおじいさんのような仏様だなあ‥いきなり「グンマのどこからかね」なんて話しかけられても不思議ではない雰囲気だ‥
拝観料などは無いようです。ご住職と話をしながら、袈裟が入ったお守りと書き置きの御朱印をいただきました。あわせて800円だったかな?安すぎる。
なんとお寺の裏手に上人が入定された石室が残っているというので、そちらも見せていただきました。きっちりと隙間なく石で囲まれて、まさしく石室。こんな所に閉じ込められたら5分で発狂してしまうに違いない。うん、即身成仏ムリ。見事入定された方たちの精神力はどれだけのものなのか。
二日で四名の仏様にご挨拶をしてまいりました。庄内にはまだまだいらっしゃるのですが、数行けばいいというものもないですからね。
即身仏とはつまりミイラなので、やはり仏像とは違う説得力を持っています。目の前50センチの距離にご遺体があって、特に佛海さまなんて正面から拝み合うわけですからね。いやが上にも「生」とはとか考えてしまうし、どんな思いでこのお姿になったのかなど思いを馳せないわけにはいきません。
今回行った三箇所は即身仏の中でも行きやすいと思いますので、ご興味を持たれた方はぜひお参りを。海向寺さんなんて映画おくりびとのロケ地である酒田なので、永遠に送られることのない方も一緒に巡るツアーなんていいかもしれません。
これで山形〜新潟ツアーの話はおしまい。次はどこの話だっけ‥京都?その前に五反田?今さらだけど色々行くね。
南岳寺 山形県鶴岡市砂田町3-6
海向寺 山形県酒田市日吉町2-7-12
観音寺 新潟県村上市肴町15-28