「お前が群馬にいないから、最近ちっともあの店に行けないじゃない」
おや、母ではないですか。いきなりものすごい剣幕でどうしましたか?はてな、「あの店」って、どの店?
母「あそこに決まってるよ!隣のおばさんちに明日行くって言っちゃうから、予約しといてよ!」
あそこ・・?ああ、隣のウチも行くということは、あそこか。
というわけでやってまいりました、私が地元で最も愛しているお店、「じゅん亭」さんです。ここに来る時はなぜか必ず母、そして隣の母娘もついてくる。
母「おいしいから仕方ないじゃない」
料理はおすすめコースのみですので、予算だけ伝えます。今回というか、毎回5千円コースでお願いしているので、こちらで選ぶのはお酒だけ。本日のお酒は・・・やや、鳳凰美田「劔」と鍋島サマームーン!!自動的にこの2つに決定!
母「私はビール」
グラスからマス、マスから皿までこぼれ落ちるサービス満点のお酒の注ぎっぷりは、さながらバビロンの空中庭園のよう。まずグラスから飲むか、先に皿にこぼれた分をすするか、嬉しい悩みです。
今日はグラスからいきましょう。うわーい、鳳凰美田は北関東の誇りです。ンマーイ!!
まずは目にも鮮やかな前菜たち。カニ脚に生麩、サヤインゲン、水ナスの生ハム巻き、ナスとそうめんの煮こごりという、目にも涼やかでお酒とも仲が良さそうなメンバーが揃います。
水ナスと生ハムがハイスピードで酒を奪う・・!!
母「ナスとそうめんが夏っぽくてビールにぴったり!」
そしてお造り。奥からタイの松皮造り、アオリイカ、そして手前の白身はなんじゃらほい。
マスター「そちらはチカメキントキですね。塩と醤油両方ご用意しましたけど、塩の方が合うかもしれません」
チカメキントキ!食べたことはあるのかもしれませんが、名前を認識して食べるのは初めてです。
サカナのイノシン酸には醤油のグルタミン酸じゃないのかこの野郎!とか屁理屈を唱えつつ、一応言われるがまま塩をチョンチョンとつけて・・・うわっ、そういうことか!UMAMIよりAMAMIか!あまーい!身の甘味が尋常でないぞ、チカメキントキ!
やはり海の生き物に合うのは海からできた塩なのか!(1秒で心変わり)
母「アオリイカも塩で食べるとあま〜い」
松皮造りは皮の旨味が強烈なので醤油の方が好み。どっちも二切れあるから両方で食べればいいのか。
お造りが終わろうというタイミングで、ウナギが裸足で逃げ出すような素敵な煙の香り。
母「何か焼き始めたね」
これは極上のサカナの脂が炭に垂れた時の危険な香り・・!
マスター「お待たせしました。ノドグロの皮目だけあぶりましたので、先ほどの醤油と塩、お好みで」
きゃー!!フェイバリット魚類ベスト5に入るノドグロ!しかも皮目だけ炭であぶるとか!その破壊力、32文ロケット砲!!
どっちにしようか悩みましたが、やはり醤油ですね。香ばしい皮、ほんのりと温まった味の濃い白身、そしてなにより、皮と身の間の脂です!炭火でとろけて最高の味に・・・!たった二切れとか残酷でござる。
ノドグロで身も心もまいったところで、まだなにか焼いていますよ。無駄にイケメンな上にドSなのか、マスター。
マスター「はい、おまたせしました。関アジを軽くあぶりましたので」
なっ・・?関アジを・・あぶる・・・?
マスター「はい、こちらの葉ワサビで巻いて食べてください」
あぶった関アジを、葉ワサビで・・?ちょっと待ってマスター、あんたバカぁ?
くるりと巻いて、パクリと一口でやっつけると・・・ぐままま!
母「関アジのお刺身は何度も食べたけど、火が通るともっと美味しいんだね!」
またこのわずかにワサビ風味の葉ワサビ、これはいかん・・!酒がなくなる!鍋島と鳳凰美田、おかわりー!
マスター「次は焼き物三種ですね。左からメバル、太刀魚のあぶり鮨、そして甘鯛です」
おお、海底人間メバルにイチノタチウオ、そして甘鯛・・は特に何も浮かばないな。
母「メバルって煮るものかと思ってたけど、上手に焼くポックポクの白身でおいしいね!」
ほ、本当だ・・!
太刀魚の鮨もたまりませんが、とにかくウマかったのが甘鯛!美味しんぼで「ウロコを焼いてこそグジ!」なんてありましたが、サックサクなウロコの食感としっとりとした白身の対比がめちゃめちゃ楽しい・・なるほど、これはウロコごと焼かねばいけないサカナです!
何杯目かイマイチわからん鳳凰美田をいただきましょう。あと何品あるのかな?油物くらいだと思うのですが。
マスター「ここでお口をかえてもらって、酢の物がわりの野菜ですね。トマトは糖度9のブリックスナインです」
まあ、群馬県太田市(ココ)でひっそりと作られている幻の激甘トマト、ブリックスナイン!実は甘いだけでなく、酸味と香りもえらいことになっていますので、お酒の途中に好適。そしてこの野菜の和え物も爽やかきわまりない。
マスター「さっぱりしていただいたところで、揚げ物です。稚鮎ですね。一応ノリがコケの生えた岩ということで」
うわーい、まるで泳いでいるかのよう!味はほろ苦一歩手前、香りもほのかな稚鮎!これは焼くより揚げるのがウマいと京極さんが言っていました。間違いなく泣きたくなるほど好みです。鮎は川魚の女王・・!
仕上げは炊き込みご飯と味噌汁。うあー、ほっこりと思いきや、味噌汁のダシがキレッキレでうますぎる・・究極神拳、「味噌汁で一杯」を炸裂させる時が来た!
母「飲み過ぎだね」
まあまあ、たまには・・・しかし久しぶりに来ましたが、やはりウマすぎますね、ここ。
母「そうでしょ?もうちょっと群馬にいればもっと来れるのに」
うーん、善処します・・・
じゅん亭 群馬県太田市新井町5156−1 GSEビル 1F