栃木県足利市はたぶんそばの町。手打ちそばの草分けとされる一茶庵本店さんをはじめ、錚々たる名店が軒を連ねている‥ほどではないけど何軒かあって、秋にはそば祭りも開かれます。だからきっとそばの町。
ご近所の佐野市のラーメン、太田市の焼きそばとご当地麺三国志を絶賛開催中なわけですが、太田市民の私から公平に見ても、太田焼きそばが形勢不利であることは否めません。さながら呂布から逃げた頃の劉備。どこかに臥龍はいないのか。
とにかくそばの町である足利市。母とその足利市のスーパーに行く途中、助手席の母が「そば食べたい」と騒ぎ出しました。えーと、この辺のそば屋は‥おおそうだ、一軒覗いてみたい店があったのでした。
確かスーパーに行く途中に新しいそば屋ができていたはず。いや、よく考えたらそう思ってから2年くらい経っていた。ちっとも新店じゃないよ!「蕎麦切り 稲おか」さんです。
店舗の写真を撮ろうとしたら、金髪のカップルが入口前でタバコを吸っていたのでなかなか撮影できない。あれっ、そういう客層なの?
母「ああいう人が来てるってことは、変な大盛りカツ丼とまずいソバのセットとかのお店じゃないの?やだなあ」
ちょっと心配になってきましたが、彼らがいなくなった後の店舗はホラ。清潔なのれんの清楚なたたずまいですよ。
母「本当だ。蕎麦切りって名前だし美味しいかもしれないね」
店に入ると石臼マシーンがお出迎え。まあ、自家製粉ですか。そして当然のように置いてある「danchu」‥これは厨年病の一つ、そば打ちたい病患者の店確定演出!その手の店で2年くらい続いているということは、これはたぶん当たりですよ!
壁には「本日の蕎麦」まで貼ってあります。いかん、これは重症患者だな。せいろそばと粗びきそばでそば粉が違うとか、やりすぎだろう…むむ、北海道はおといねっぷ村のキタワセソバは気になるなあ。
ではメニューを拝見。「こだわりの石臼挽き蕎麦を中心に」…そうか、今は「こだわり」ってポジティブな意味に使われているんですよねー。最近はテレビでも当然のように褒め言葉で使っていますね。言葉は生き物だなあ。
私はあまり好きでないので、その言葉を使わないのが当ブログのこだわり。あ、使っちゃった!
ただ今のおすすめメニューはやはり音威子府の粗びきそばか!限定10食かー。まだあるのかな‥どうしよう‥
「私は粗びきせいろ野菜天付き」
ふはっ、さすが疾風の母者(ムッター・デア・シュトゥルム)!先に粗びきを奪われてしまった!では普通メニューも見てみるか‥
とりあえず冷たいそばから見てみましょう。すだちの冷かけそばはコトダマ的にもウマそうです。あとはそうですね、最近どこに行っても鴨せいろを食べている気がしますが、やはり鉄板ですよね!
たぶん頼まないと思いますが、一応あたたかいそばもチェック。鴨南蛮と天ぷらそばという二大巨頭はもちろんいらっしゃいます。車でなければ鴨抜きで一杯いきたいところ。もしかしたらそばじゃなくて鴨が好きなのか、私。
あらやだ、ミニわさび丼なんてあるのね!わさび丼ってものすごくウマいですよね。孤独のグルメの影響で伊豆のお店が人気らしいですが、信州は大王わさび農場のソレもすごくウマい!景色も素晴らしいので激しくオススメです。そのうち記事でも書かねば。
熱いお茶をすすりながら注文を確定させないと‥初めてのお店ですので無難なメニューにいきますか。そして粗びきは母に奪われましたから‥はい、鴨せいろ願いまーす!
結局居酒屋では馬刺し、そば屋では鴨せいろです。脳死だ。
まずは母の注文、野菜天がやってまいりました。粗びきせいろが750円で野菜天せいろ1400円ということは、650円の野菜天ぷらがこれか!
母「なんかすごく多いね!」
驚きましたね。マイタケ・ピーマン・ニンジン・タマネギ・カボチャ・サツマイモ・ジャガイモ・ナス・あとなんか緑のカタマリ‥母が嫌いなマイタケをもらいましたが、カラリとして軽やか。これはちょっと飲みたくなる。
そして粗びきそばは?おおー、見るからに粗びきだ!すごい!
母「もっちもちでそばの香りがプンプンするよ!おいしい」
そばにはやけにうるさい母が満足しているようなので、相当ウマかったのでしょう(もらえなかった)。
こちらの鴨せいろも到着!ふはー!こちらは粗びきとは一転、なんて端正なルックスでしょう。
「そばは間をハエが通れるくらいに盛るのがよし」という言葉があるそうですが、その通りにざっくりと盛られたそば。
そして大盛りコールをした覚えはありませんが、いわゆる手打ち系の店にしてはやけにボリューム感があります。
返しと出汁の黄金比を感じさせる色のツユも美しい!鴨肉もたっぷり入っている雰囲気。これは期待するなという方が無理な相談ですよ。
まずはツユなしてひとすすりいきますか!エッジの立った包丁の冴え、その角がほんのり透明の美しい茹で加減、あまり星がなく均一な細切り。私好みののどごしを予感させますね‥ズルルー。
ありゃりゃ、これは予想通りというか、ちょっと予想の上のウマさ!生煮えでなく、しかも冷水で表面を締められたそばの素敵な噛み応えはどうだ‥!
そして喉を通る直前、ふんわりと鼻に抜けるそば風味。ふわーい、これぞそば!
このそばなら鴨汁の味にも耐えうるっ!というわけで、半分くらいツユにひたしてズルルっといきましょう!
・・・うううう、うまままー!カツオと返しに鴨が入って強烈なウマさのツユがたまらない!そしてそのツユに負けないそばもすごい!
鴨自体の旨みもレッドゾーンです。そばも鴨も冬あたりが旬かと思いましたので、こんな時期にこれでは冬はどうなるのやら。ちょっと検証が必要ですね。
卓上に七味があるのになぜお盆にも?と思ったら、これは鴨せいろ専用の山椒だそうです。なるほど、鴨に山椒は合いそう。
パラパラとツユにふり入れてみましょう。
そして鴨肉とそばを両成敗!温かい鴨肉と冷たいそばの楽しい対比!そして最後に温かいツユが喉を抜ける・・こ、これはたまらんですたい!山椒もバッチリ合うぞ!
夢中になって鴨だー、そばだー、ネギだー、カモネギだー、うおー!とやっつけましょう。
もちろん仕上げにはそば湯をいただくのであります。うひょー、夏なのに身も心も温まるでござるよ。いいダシだなあ‥なんだか久しぶりに当たりのそば屋さんを見つけてうれしい。
母「おなかいっぱいだね」
驚くほどの量でしたね。鴨せいろだけだとなんとなく物足りないお店が多いですが、ここはバッチリ満足。
こうなると、車以外で来てそば屋酒を決めたいところ‥!
改めてメニューを見ると、あらやだ。お酒もツマミも揃っているじゃないですかー!
板わさと焼き味噌で四季桜をいただいて、鴨抜きで開華を飲んでせいろで締めるか‥いや、それではちょっと時間が長くて野暮かしら‥とか考えるのもそば屋酒の楽しさ。うむ、絶対ココで一杯決めるぜ!
蕎麦切り 稲おか 栃木県足利市朝倉町2丁目11-28