「外飲みできそうな雰囲気なんで例の海鮮行きませんか」
アプリ開発者のPさんからそんなDMが届いたのはいいですが、はて、例の海鮮とは・・酔っぱらっている時にTwitterでやり取りをしたのでしょう、たぶん。
覚えているフリをしてぜひ行きましょうと返信すると、お店の詳細が来ました。なになに、船橋?また近くないね。駅で降りるのは初めてかも。
Pさんに連れられて、船橋駅から歩くことおおむね5分で着きましたのは「旬食だいにんぐ 潮風」さんです。あら、「準備してます」ですって。
P「ちょっと早く着いちゃいましたからね。あ、でも中で待たせてくれるみたいです」
それはありがたい、入りましょうか。
P「先に言っておきますけど、女将というか店長さん、めっちゃしゃべりますんで」
女将さん「いらっしゃい!あれ、メニューの写真撮ってる?でもあんまり意味ないよ」
なんですかそれは。どういうこと?
P「出てくるのはその日のオススメ、お任せコースっていうのかな。でも生ガキと鯨は食べたいなあ」
女将さん「大丈夫、鯨は今日のお刺身に入ってるし生ガキもあるよ。あとはお野菜を選んでね〜」
女将さん「お通しはホンビノスね。飲み物はどうする?」
おお、ホンビノスらしいたっぷりした食感と濃厚な磯の風味。これは芳醇な日本酒が欲しいと言ったら山口のOhmineが出てきました。低アルコールでコメの旨味を残したお酒、うれし〜い。これは良い夜になりそうだぞ。
ホンビノスでOhmineを2杯ほどいただきまして、お次はホタテ刺し。
女将さん「ウチは活きたホタテしか出さないから。冷凍の柔らかいヤツとは食感が違うから食べてみて」
ホントだ、シャキッと切れるように歯が通ってその後むっちり。甘味も尋常でないな。ホタテということで北の方お酒を・・やあ、宮城の愛宕の松が出た。
女将さん「これは肝を焼いたの。活きてるから、苦味とか臭みなんて全くないから」
肝なのにクセなんかなし、まさしく海の旨味がみっちみちに凝縮されていますね〜。愛宕の松が一瞬で消えてしまう。
しばらく後に入ってきたお客さん、ホタテが死んじゃったから出せないと言われていました。ホタテ目当てならお早めの時間に来店を。
女将さん「これは活きクルマエビね。ベキッて頭をねじっちゃってね」
キューキュー鳴き声(?)がするところをブリブリと噛みしめれば甘いの、うまいの。ミソをすすれば酒が・・ない!おかわり!
女将さん「飲むの早っ!このペースじゃ一升じゃきかないじゃん!」
肴が良すぎるんですよ。仕方ない。
女将さん「子持ち昆布は本当にニシンが卵をつけたヤツだから。天然でこんなに厚いのは他じゃ出ないよ」
パツンパツン弾けてたまりません。たっぷりかかった鰹節もエエ物ですねえ。
女将さん「ウチのお刺身はね、醤油で食べたら退場だから。わさびで食べてくださ〜い」
退場って怖い!ああ、このマグロはすさまじいですね。本マグロのとんでもない部分を分厚く切っちゃってもう。
女将さん「そうでしょ〜、イクラもマグロも銀座のお寿司屋さんに負けないものだけど、向こうで食べたら何万だからね」
わさびというかわさび漬けというか、塩気の強いわさび和えは確かに醤油不要で楽しい。なぜか山形のお酒が恋しく・・やや、上喜元の百舌鳥があるのですか。ください。
女将さん「はい、鯨は握りだけど、これはすぐに食べてください。ほらほら、すぐ」
一瞬で写真を撮って、パクっ。おっと、ご飯がホッカホカ。なるほど、この温かさで鯨のウマさがアップという算段ですか。
女将さん「これはね、でっかい鯨からほんの少ししか取れない部位で、そのほとんど全部をウチが仕入れちゃうからね、つまり他では食べられません」
良い意味での獣肉っぽいクセがあって、でも舌触りはなんとなく魚で、鯨の面白さがよく分かる部位だけど・・はっ、部位名を聞くの忘れた。
カセットコンロと鍋が置かれましたよ。
女将さん「今日のメインはあんこう鍋、どぶ汁風ね。はい、せまいけどごめんね」
うひょ〜、満たされた出汁からすでに素敵な香りが来るじゃありませんか。
女将さん「小さなアンコウ7匹分の肝を入れます。」
ひえ〜、アンキモ、アンキモ・・見るからにウマそうなあん肝を店員さんが少しずつ出汁に溶き入れていきます。
あん肝色に染まった汁にどんどこ具材を投入。
女将さん「白菜の芯が透けてくるまで待ってくださ〜い。その間にこちら」
なんと見事な生牡蠣でしょう。この後にあんこう鍋だし、ここは力強い無濾過生原酒などいただきたい。と、出てきたのは石川のTedorigawa neo.です。ハイカラな名前だけど昔ながらの山廃仕込み、きつすぎない吟醸香と適度な酸味が良い感じ。好き。
海鮮も素晴らしいけど、日本酒の品揃えも尋常ではないな。なんていい店を教えてくれるんだ、Pさん。そのPさんは知多ハイボールだけど。
P「日本酒分けてもらっていいですか」
やぶへびだったか。少しだけですよ。
最初に選んだナスが今出てきた!
女将さん「あの時からず〜っと低温で火を入れてたから」
鰹節の山で見えませんが、巨大なナスがトロットロになってこいつはたまらん。手取川おかわり!
女将さん「だから早いんだって!」
女将さん「お鍋がそろそろいい感じかな?じゃあ春菊を入れて、ざざっとお出汁をかけて、まずはこれだけで食べてください」
ほうほう、いわば春菊のしゃぶしゃぶ?こんな半生で・・う、うめぇ〜。食感も風味もふんわりしていて京菊菜のようだ。
そしてキューが出たのであんこうを食べる!あんこうのフルフルやクニクニはもちろん面白おいしいのですが、肝出汁を吸い倒した白菜!柚子の皮をかけると絶品どころの話ではないっ!
うまいうまいと瞬く間に具材は空っぽ。
女将さん「そしたらね〜、うちのシメは三段階になってるから」
シメが三段階ってどういうことよ。なんだか「どういうことよ」ばっかり言わされているようだ。
女将さん「ネギとタマゴ、そしてご飯は少しだけ入れて、まずはお出汁とネギの風味を楽しんでください」
これは素敵。青いネギの香りが映えるわ〜。なんか山廃のお酒ください。
女将さん「シメでも飲むんかい!」
と言いつつ、高知の久礼を出してくれました。
女将さん「次はお米にしっかりとお出汁を吸わせて」
今度は由緒正しいおじやですね。ものすごいあん肝の旨味。フグとあんこうはこのゴールがあってこそだなあ。軽い盛りだけどお酒が一合はすっとんでいきます。
女将さん「そして最後は・・Pさん、覚えてる?」
P「あれ、なんでしたっけ」
女将さん「はい、これです」
・・・ごはん。ですね。
P「ああっ、そうだった!」
え?どういうことよ。
女将さん「これにね、おじやをかけるの」
え〜っ?R・田中一郎の必殺技おかゆライス?ならぬ、おじやライス!こんなのアリ?
固めに炊かれたご飯とトロトロのおじやの対比が面白くて、煮詰まりつつあるからちょうどいい味になって・・アリ、大いにアリ!これで飲みたいから芋のロックください!
そしてお会計となると決して高くない。お酒飲みすぎで内訳はよくわかりませんが、料理だけなら6千円とか7千円とか、そんなもんかな?このレベルの海鮮ではあり得ない。女将さんの言葉を借りれば、銀座ならウン万です。
予約なしの方が帰っていく姿も見えたけど、こんなウマいものを安く食べさせるんだもんな、予約必須だよな。いちいち入る女将さんの説明も面白いしね。ただ醤油かけたら退場とか、苦手と感じる人はいるかもしれない。
ぼくは全く気にしないというか好きなので、Pさん、また予約をする際にはお声掛けください。夏場にあわびしゃぶしゃぶ食べたいです(業務連絡)。
旬食だいにんぐ 潮風 千葉県船橋市本町1-13-1