「詳細は全くわからないけど、都築響一さんの美術館がスカイツリーの近くにできたそうだから行きません?」
とんでもなく嬉しい情報を流してくれるのは友人じゃないですか。思えば氏の珍日本紀行のせいで運転中毒になったようなものです。行く行く、絶対行く。
東武伊勢崎線スカイツリーラインで曳舟駅に向かい、向島の花街へ。
花街といえばの料亭を改装した「大道芸術館」に到着です。立地と建物からすでに只事ではない雰囲気がプンプン。
今のところはネット予約のみ、1ドリンクつきで3,000円です。ドリンクつきの芸術館ってどういうことだろ?
友人「予約する時に改めてHP見たけど、結局何もわからない」
でもほら、「museum of roadside art」の文字。珍日本紀行で見た路傍の徒花たちが優しく出迎えてくれる・・のかなあ?
入るなりコレですよ。予想を易々と置き去りにする、超光速のスタートダッシュです。予約のQRコードを係の方に見せ、スリッパに履き替えて深呼吸。すごい時間が始まりそうだ・・
係員さん「このお姉さんは鳥羽の秘宝館でお出迎えをしていた方なんですよ〜。写真撮影はご自由にどうぞ。SNSにもバンバンあげちゃって構いませんから」
まさかのなんでもありノールール。おおらかですねえ。
係員さん「各階の入口にあるQRコードから解説に飛べます。お好きなようにご観覧くださって結構ですが、まず左手のお部屋だけ先にご案内しますね」
案内された大部屋は、壁の柄といいソファーの生地といいまさしく昭和のキャバレー・・だが、明らかにセンシティブな方の姿が見える。
係員さん「当時モノのソファーとか集めたんですよ。大画面でレーザーディスクのカラオケもできまして、いずれ貸切とかできるようになったらな〜と」
友人「ええっ、この空間でレーザーディスク縛りのカラオケ大会?絶対楽しすぎるでしょ!」
係員さん「奥のお姉さんが蝋人形、テーブル下の子がラブドールです。お姉さんはちょっと見えちゃってるので、BANされないようタコさんごしに撮ってください」
おお、若き日の美輪先生っぽくも見えるお姉さん・・なるほど、タコさんをこの角度に入れれば諸々セーフ、なのか。
近くで見ると蝋とは思えぬ、いや蝋だからこそなのか、あまりにも艶かしい肌の質感。お尻から腿にかけてのラインというか肉の盛りもすごい・・なんだろう、この執念あふれる造形は・・なんでも世界屈指の蝋人形師・松崎覚さんの作品なのだそうです。
手の型を作る→濃いめの蝋で血管を作る→半透明の蝋で皮膚を作るという、狂気のような工程で生み出された蝋表現の極致!
係員さん「それではこちらからどうぞ。3階を見ていただいてから、2階のバーでゆっくりされるのがいいかと思います」
はい、いってきま〜す。やや、ニコニコ送り出してくれるのはTVでおなじみの秘宝オジサン!まぼろし博覧会以来ですね。お元気そうで何よりです。
階段の壁にもレトロポスターや官能的なアート作品が並んで、5段上がるのに5分以上かかりそうな勢い。女子小人プロレスリング大試合!巴ユキ子にプリティアトム!み、見たい・・!
こちらはロッキン・ジェリービーンさんの大雷神。大風神もありました。素晴らしい作品群の詳細は入口で売っている冊子で知ることができます。
どこで何のために掲げていたのか全くわからない。とにかくすごいインパクトだ。この柄のアクキーやステッカーも売っていたのでお好きな方はどうぞ(買った)。
そして3階にはさらにディープなインパクト、まさに衝撃の光景が広がっていた・・!
復ッ活ッ!西暦1981年に誕生、2000年にあまり惜しまれることもなく姿を消してしまった性の蜃気楼、鳥羽国際秘宝館・SF未来館の未来パート、復活ッッ!SF未来館、復活ッッ!
1999年、予言の通り危機を迎えた世界!ヒトリー将軍の命により、人類再生を懸けた超未来人間製造プロジェクトが始まった!
優秀な人間から遺伝子的な何かを強制搾取!
松本零士ばりのメーター多め古典的コンソール!ゴトンゴトンと動くパイプ!ああ、20世紀のSFだ。
そして(なぜか)美女のみに強制注入!苦悶か快楽かどっちともつかない表情ですが、とにかく迫真です。
もちろん本来はバストトップ丸出し。壁紙が往時の写真となっておりますので、ぜひとも現地でご確認を。
特殊磁気と短期成長イースト菌により、たった3ヶ月で18歳の大人に・・いや、一体何を見せられているんだ?
失敗作は生体消滅装置にて処理されます・・え、完成した超未来美女じゃなくてコッチを見せるの?
秘宝館ってエッチなモノを展示する場所だと思ったのですが、コレは一体どういった層に向けた・・とりあえず、今スゴいモノ見ている!って感は満載です。エクセレントでマーベラスです。
当時は撮影禁止でした。「違反された方はフィルムを没収します」ですよ。フィルム!
いや〜、完全に脳ごとKOされた・・数十年の時を経て蘇った鳥羽SF未来館、正直に言って見応えしかありません。みんな見て。
ちょっとしたスペースにも三角木馬に跨った蝋人形さんが。あれ、このセクシーさはもしかして、あなたも松崎先生の作品ですか?なんでも館内に3名いらっしゃるそうです。
あまりの刺激にフラフラです。2階で飲み物でもいただいて心を鎮めましょう。
看板娘のラブドール、かずのこちゃんがお出迎え。2階は「茶と酒 わかめ」というバーのようなキャバレーのような、そんなお店という設定になっているようです。
着物の女将さんをはじめ、動く方と動かない方が全力でおもてなしをしてくれます・・が、結局刺激だらけだよね。安らげるわけありませんでした。
カウンターにはピンク映画のポスターを小さく印刷したものが敷き詰められて素敵だ。ポルノが大手、ピンクがインディーみたいな豆知識を女将さんが軽妙なトークで解説してくれて、勉強になるやら楽しいやら。
女将さんは本物のキャバレー運営会社から送り込まれている真のプロフェッショナルとか。道理で。
ドリンクはもちろんアルコールも選べるのでハイボールをいただくと、お通しとして珍ちんおつまみ。このお菓子の袋と川柳カードに関してもイカしたエピソードがあるので聞いてみてください。
動かないホステスさんは記念撮影どころかおさわりまで自由。あかがいちゃん相手にヨコシマな写真をたくさん撮っていて気がつきましたが、後ろの人魚の絵もやたらと味がありますね。なんとなく見世物小屋チックというか。
女将さん「そうなんです。実際に見世物小屋の看板として使われていた絵で・・」
またまた大変興味深いお話を聞くことができました。そうなのか〜。
寝転んでいるのはいさきちゃんだったかな?かずのこ、あかがい、いさき・・名前の由来は「なんとなくエッチな海産物」なワケですか。
その背後にはこれまた見世物小屋、こっちは女プロレスだ!なるほど、豊田真奈美の正面跳びドロップキックこそ女子プロレスの正統なんだな。
蛇女のカッコ良さはどうですか。実際の蛇女がどんなのとか関係なく、完全な妄想で描かれたそうです。すごいぞ大衆芸術社。
カウンターで読書をしている方もラブドールちゃんだった。お名前忘れたけど好みど真ん中。ほ、欲しい・・永遠に眠れる森の美女よ・・
友人「ショールームに行ったことあるけど、ホントにオリエント工業さんのコはみんなかわいいよね」
ラブドールのかわいさにも驚きましたが、さらに驚いたのはお客さんが若い女性ばかりなんですよね。秘宝館といえばツアーバスから降りてきた消防のオッサンたちが入るモノという概念そのものが昭和の遺物らしい。
立派な胸のため友人に「おっぱいちゃん」と呼ばれている方が、乳搾りマシーンに首をのせて記念撮影する新次元VR。一人で来ていた方が女将さんと話しているうちに覚醒、かずのこちゃんの股間を枕に寝始めた!いや、こんなステキなシーンの連続を楽しんでいいの?別料金?
みんな開放的になって、みんな空間そのものを楽しんでキャッキャウフフしている。館内の空間そのものがアート、これぞ真のインスタレーションだ。だから「美術館」でなく「芸術館」なんだと勝手に解釈して納得しました。素晴らしい!
見世物看板は他にもいっぱいあるから展示替えもあるらしいし、入場券を集めた人には何か特典も考えているということで、再訪どころか通わざるを得ないのでした。
都築響一コレクション 大道芸術館 東京都墨田区向島5丁目28−4