宇都宮ですっぽん鍋をつつきながら‥かもし家さんの料理が美味しくて連続で来ていますが、新しいお店を開拓してみたいぼくもいる。友人、地元なところでどこか心当たりがありませんか。
「有名なブログによく出てくるあこがれのお店があって、場所が分かりにくいし一見さんは入れないけど、色々なお酒があってお魚メインのすごいツマミがどんどん出てくるって」
なんですかそんな悪い大人の隠れ家みたいな。なんてお店?‥ふむふむ‥HPによると、器の大きい方のみ歓迎!一見さんお断り、でも予約すればOK?厳しいのか緩いのか分からんルールだね。よし電話してみるか。
「え、今?」
もしもし‥ええ、2名で、はい、はい‥あら取れちゃった。3月頭行きましょう。
餃子通りの北西にあります百目鬼通り。いかにも曰くがありそうな怪しげな通りにコッソリと、本当にコッソリとあります「ぎやまん HANARE」さん。一見さんお断りの前に、初見でフラっと入るの無理だろコレ。
お店に通じるさらに細〜い道を通って重めの引き戸を開ける‥未踏のダンジョンを探検するかのような楽しさがあるね。
靴を脱いで下駄箱に入れる式のお店に入って予約名を告げると、廊下の奥の個室をご用意してありますとのことです。
器の大きい方のみ歓迎。一見様はお断り。お客様が神様だとは思っておりません。でも良いモノを心を込めてご提供させていただきます。
なかなか怖そうな文言ですが、電話の感じは面白い方だったんですよね。3月ですか、それまでに潰れてなければ大丈夫ですよ〜なんて。
「お客様は神様とは思っておりません」は、本当にそうだね。人と人だよね。
料理は7,700〜9,900円のおまかせコースのみ。今回は9,900円でお願いしました。金額の差は量でなく質の違いだそうです。
店員さん「お飲み物のご注文はお決まりですか?」
テーブルの上にはぐい呑みやお猪口が多数用意されているので、これはお酒をたくさん飲めということですね。日本酒‥そうですね、何か生酒があればお願いします。
え、コニカルビーカーで持ってきてくれるの?確かにこれなら注ぐ方も飲む方も正一合が確認できて合理的だ。たまに「おっと多かったかな」なんて200ml以上注いでくれたりしてありがとうございます。
生酒という雑なリクエストに応えてくれたのは山形の上喜元 神力 純米吟醸。ただでさえキレキレなお酒に加わるフレッシュ感。一杯目に最高だなあ。
木箱が運ばれてきて何事かと思えば、中には酒盃に入った肴たち!うわ〜こう来るか。
「空いた器はこちらの空箱に置いてください」
もしかして盃が減ったら随時補充されていくのだろうか。なんか面白いことになってきたぞ。
こちらの列はクラゲとキュウリの五香粉・タラ白子の黄身生姜・落としハモ梅大根。
クラゲが最初の一口にもってこいなのは昔からの決まり。白子と黄身なんて新生物が産まれそうなイカした組み合わせじゃありませんか。そしてハモ、君はこんな季節にもいたんだな。やっぱり梅と合うな。
一年牡蠣と海苔の佃煮とフキノトウ・〆コハダもずく酢。
一年牡蠣って一年でこんなデカく育つの?しかもすごい旨味、どんだけ恵まれた海で育ったんだ。海苔の佃煮との磯の香り対決も楽しいね。
コハダにもずくなんてこっちは酢のもの対決!お酒で甘くなりがちな舌にありがたい。
柳たこパイナップルチーズ・あん肝と金柑のジャム・茹でホタルイカとスルメイカ塩辛。
たこにパイナップルにチーズとはミスター味っ子もビックリな組み合わせ‥あらやだ、そのまんま甘くてトロピカルなお味なのに、なぜこんなに酒を呼ぶのだ。不思議うまい。
あん肝にわずかに残るレバー的クセは金柑ジャムのスッキリ感で風味に化ける。
ホタルイカの下からイカの塩辛が出てくるのは反則にも程がないですか?どの盃にも組み合わせの妙があって面白い上にお酒が進む。楽しいなあ。
こんな佳肴ばかりではビーカー1つで足りるワケもなし。お酒おかわり願いま〜す。
生ではないけど生酒のようにフレッシュなお酒ということで、佐賀の鍋島 ブロッサムムーン。あれば飲んじゃう鳳凰美田と鍋島。
盃がいくつか空いたスペースに置かれたものは、あっと驚く仙崎の白皮甘鯛の揚げ焼き!高級魚の中の高級魚が来た!
揚げ焼きにされたことで、ご自慢のウロコは見事にサックサクのパリパリ。とんでもない香ばしさからあふれ出る脂にしっとりとした白身‥ぐわ〜!甘鯛うめえ〜!!
店員さん「作はお好きですか?」
そりゃもう、むしろ嫌いな人いるんですかね?ください!
三重の作 恵乃智 純米吟醸。香り甘味酸味どれもが豊かだけどきつすぎず肴を引き立てる‥近所に作を売っているお店がないから久しぶり。やっぱり好きだなあ。
店員さん「そうなんですか?作はもちろん、他にも色々なお酒が置いてあるお店がありますよ。ちょっと待ってくださいね」
なんと店名と住所を書いたメモを渡してくれました。ありがとうございます。減酒中のところに大きな障害ができてしまった!
次はお造りにあたるのかな?この白身はまさか‥そのまさかだ、トラフグのたたき!柚子胡椒とポン酢で楽しむ、たくましい歯ごたえとにじみ出る旨味‥んあ〜、うまい フグ うまい。
次もお造り、釣り師垂涎メジナの刺身です。北関東で普通に生活しているとほとんど出会わないお魚ですよね。もちもちたっぷりとした食感が気持ちいいですねえ。
出ましたお酒は岐阜の百春 純米中汲みしぼりたて。ジュワッと来るガス感とほのかな酸味で好きだ、大好きだ。コレも教わったお店で買えるのだろうか。しぼりたてだから売り切れちゃったかもしれん。
冷酒が入りそうなグラスに突き刺さっているのはサワラ!下のペーストは焼きナスおろし!
もう何度目か分かりませんが、なんて意外でおいしい組み合わせだ。そしてまたなんで北関東で当たり前のようにサワラのたたきが出てくるんだ。普通は西京焼きになっちゃうよね。
赤海老とホタテのパセリマヨ。今までのビックリなコンボと比べればなんとなく分かるような、そりゃうまいだろうと納得の組み合わせです。エビミソ尊いエビミソ。
ひと通り肴が出たところで「これからお鍋です。今日はトラフグになります」だって。
結構お腹にたまってきたこのタイミングで!トラフグの鍋が開始?
落ち着け、広島の天寶一 萌えいぶき純米 直汲み生で態勢を整えるのだ。というか後半に来てもしっかり生酒を持ってきてくれるんですね。お酒何種類置いてあるんだろ。
フグチリとはちょっと違う、トラフグのぶつ切りにキノコや菜の花を入れたまさしく「鍋」だ!
地鶏のもも肉と間違えてしまいそうなフグの歯ごたえ!でもにじみ出る旨味と出汁に与える風味はやっぱりサカナ、しかもアブラなしの純粋な旨味なんだよな〜。キノコや野菜が綺羅星の如く輝いちゃうって。
今から鍋なんて食べ切れるのかと思ったけれど、あまりの美味しさと計算された適度な量でお鍋すっかり食うモノなし。
店員さん「次がお食事になります」
おお、フグ雑炊かな?
ダーッハッハ!アワビの昆布締めとウニのご飯?どこからどこまで予想を上回ってくれるんでしょう。アワビが突き刺さったシメご飯なんて初めてだよ!
あ、ご飯は酢飯なんですね。ワサビとあわせればお腹いっぱいでもスルスル入ってしまう魔性のご飯。ちっともシメじゃない、どう考えてもツマミなので芋のロックをお願いしました。
ここでなぜかシメ後のツマミ、平貝の磯部焼きまで出て芋ロックおかわり、しあわせいっぱい。
ラストのデザートでもしっかり驚かせてくれます。大きな大きなとちあいかを箱ごと持ってきて「どうぞお好きなだけ」と来たもんだ。さすが栃木のいちご、甘さも香りもすごくて、すごい。変なケーキよりはるかにデセールパワーが強いわ。
ほうじ茶で今度こそごちそうさま。たっぷり3時間弱、良い酒良い肴をこれでもかと堪能させていただきました。9,900円でこのコース、お酒もあれだけいただいて何千円とか宇都宮という立地ゆえの奇跡としか思えません。
注意書きに「同じメニューが次回あるとは限りません」ってあったけど、つまり季節や仕入れでメニューが変わるってことですよね?これは楽しみが増えちゃったぞ。
隠酒蔵 ぎやまんHANARE 栃木県宇都宮市塙田2-4-15