ソバよし、天ぷらよし、あげくに器も最高なら行くしかありません とき庵(比企郡ときがわ町)

「ちょっと!あんまりウチにいないから、ソバが足りないよ!行くよ!」

いきなりカンカンに怒っているのは母ではないですか‥いやちょっと待ってください。私は数日間深夜までの飲み会が続いて、やっとの思いで群馬に帰ってきたのが今朝でして‥オフトゥンにですね‥

母「どこがいいかなー。うん、ときがわの‥なんて言ったっけ。天ぷらがすごく美味しい蕎麦屋さんに行こう!」

まずは聞け!まずは聞いてくれよ、俺の言い訳を‥!ああ、もう車の前にスタンバイしている…

とういわけでやってまいりました、埼玉の秘境かもしれないときがわ町。何もない道にいきなりあります看板は「 とき庵」さん。以前はお店の前に6・7台だった駐車スペースが、隣の民家(自宅?)の庭まで解放されて10数台にアップしていた。これはうれしい。

でもやっぱり繁盛店なので、来店の際には12時より早く着いた方が安心かもしれません。車以外に来る術がないので、駐車場大事。

開店時間は11時半。その2分前に到着しましたが、もはやのれんが出ております。うわーい、飛び込むように入店‥いや、ちょっと待て。

本日の天ぷらをチェックしておきましょう。こちらの天ぷらは入荷次第。いつ何時でも季節のウマいものや珍しいものを揚げてくれます。今日は‥?ふきのとう以外は天ぷらっぽくないメンバーに見えます。

母「アピオスって何?」

私の記憶が確かなら、北米原産でやたらと栄養価が高いちっちゃいイモだった気がします。聞いただけで食べたことはありません。そしてユズやぶ椿‥なんか楽しみだな、おい!

とりあえず入店すると、2卓ほど空きがあります。逆に言えば開店同時で2卓しか空きがないのか。お座敷席を含めて8卓くらいのキャパですが、こんな山の中ですごい人気だ。

いらっしゃいませ〜と出てきたお茶。狭山茶の産地に近いのでもちろん美味しいのですが、とにかく青織部の器が美しくて仕方ない。

こちらのお店で使われている器は全て、ここときがわ町に工房を構える弓立窯さんのものを使用しているそうです。こちらの織部があまりに気に入ったので、実はウチでもたくさん購入して愛用しております。

ではメニューを見ましょう。母は最近知人と訪れたそうですが、私は数年ぶり。どんなメニューだったかなー。

もりそばは色が黒い挽きぐるみの九割そばということです。そこは変わらないな。地鶏卵のざるそばもある。卵黄に蕎麦汁を入れて混ぜて食べるという、こちらも以前からあるメニューです。見るたびに気になってはいますが、結局まだ注文したことはない。

焦がし葱と焦がし醤油の冷製鴨汁そばだと!?これは初めて見た!絶っっっ対ウマいだろこんなの!!

母「鴨好きだもんね。いつも食べてるでしょ」

そば屋さんでの鴨のそば注文率80%強を誇りますからね‥こ、これかなあ。

辛み大根のおろしそば・旬野菜のかき揚げ添え‥こちらにもチートなメニューがありますよ。辛い大根とそばの相性は異常。

母「これ美味しそう‥ここは天ぷらがすごく美味しいから、野菜のかき揚げも絶対美味しいよね」

辛み大根のそばってだけで反則なのに、野菜のかき揚げ‥むむ〜!悩ましい‥!

人気No.1という地山菜の天もり蕎麦

母「前はこれだったけど、人参はあまーいし、紅葉はキレイで美味しいし、どれも面白くて美味しかったんだよね〜。天ぷらをいろいろ食べたいから、やっぱりこれにしよう」

土曜日限定、十割太うち粗挽き蕎麦・天ぷら付きもあります。今日は土曜日‥あれ、頼めるじゃないの?‥と思いましたが、実は十割そばってあんまり注文しない。ここのデフォは九割だから‥やはり普通の地山菜の天もり蕎麦で!結局同じものを2つですね。

待つこと15分くらいかな?あまりにも麗しいセットがやってまいりました。青織部の緑を中心に、黒みがかったソバ、彩り豊かすぎる天ぷらと、一幅の絵画のよう。

薬味はネギとわさび、そして小鉢というか付け合わせというのか、ごま豆腐みたいなものがついてきました。

母「これってそば豆腐なんだよね。すごい蕎麦の味でおいしいの」

ほ、本当だ‥!食感はごま豆腐ですが、風味はソバそのまんま!そばがきのねっとりもっちりバージョンでしょうか。これは蕎麦焼酎を飲みたくなります。

そしてこの天ぷらの美しさはどうですか‥!手前のやぶ椿が目を奪ってなりませんが、ゆずとかアピオスとか変わり種も多数。熱いうちにさっそく‥と思いましたが

やっぱりソバ屋さんですので、ソバからいただきましょうか。色といい丸まり方といい、なんとなく大仏さまの頭頂部を思わせます。看板に「黒いそば」ってあったけど、ホントに黒いな!挽きぐるみにもほどがあります。

えーと、どうしようかな。天ぷら用の塩があるからパラリとかけて、数本すすってみましょう‥ずるずる。

ほうほう。見た目の通り、喉越しバンザイではなく、モグモグと噛んでそば粉そのものの甘みと風味を楽しむタイプですね。舌にちょっとざらつきを感じるのが、いかにも粗挽きで楽しい。

母「噛んでるとソバの香りが鼻に抜けるね。ズルズルーってソバが好きだけど、これはこれですごくおいしい」

お次はツユにつけまして。濃厚な出汁と、キリッと締まった辛口ながら甘味も感じる、これまた濃厚な返し。力強いソバに合いますね〜。

数年前は天ぷらのウマさにばっかり驚いていた気がしましたが、ソバもツユもすごくウマいじゃないか!‥って、そりゃそうだ、ソバ屋さんだもの。

それでは天ぷらにまいりましょう。こちらは塩だけ。天つゆはありません。

母「なんなら塩もいらないくらい美味しいよね〜」

最近食べた母はそう言っておりますが、そうだったかな?いただいてみましょう。

いきなりアピオス。銀杏大なのでほんの一口ですが、この味と食感は‥むかごだ。つまり間違いなくイモだ。

母「本当だ。むかごみたい」

店員さん「アピオス、珍しいでしょう?ときがわの名産なんですよ〜。栄養たっぷりだから、近くの農産物直売所で買っていってね〜」

なんと!地産地消ってやつですね。

お次は地ごぼう。ごぼうの天ぷらは好きですが、これはさらに別物。

母「どうしてこんな薄い衣でこんなほっくほくに揚がるんだろう‥」

ごぼうの風味は抜群なのに、繊維感は消えてぽくぽくになっている‥これは酒が欲しくならないわけがあろうか(いやない)。

ひときわ目を惹くやぶ椿。菊の花以外を食べる機会はそうありません。あ、ちょっと前にニラの花の天ぷらを食べたか。

母「すごくキレイだけど、味はないね」

確かに食感も味も特に感想はないですね‥でも見た目がおめでたいからいいのではないでしょうか。インスタ映えというやつだ。たぶん。

初春の天ぷら界のエースといえば、こちらふきのとう先輩。やぶ椿に負けじと見事に花開いています。ほろ苦さといかにも青い香りがたまりません。あれ、ほろ苦い上にほんのり甘味すらあるな。どんだけ揚げ方が上手なんだ。

母「今まで食べたふきのとうの天ぷらで一番かも‥」

母くらい長い人生でそうなのだから、相当ウマいのでしょう。なんでコレで酒が飲めないのだ?新手の拷問か?

これはエシャレット。私はよく酒のアテとして生のまま味噌をつけてかじりますが、天ぷらにしたことはありません。

母「ものすごく甘くなるんだね〜!コレすごく気に入った!ウチでもマネしよう」

こんな見事な味になりますかねえ?

母「ドーンと衣をつけてじっくり揚げれば、見た目はどうでも甘くはなるよ!きっと」

見た目はどうでも。

安納芋の天ぷら‥あれ、母はイモの天ぷら嫌いでしたよね。引き受けましょうか?

母「それが前回もコレが出てね、もんのすごーくおいしかったの。だからあげない」

カブリといただくと、ねっとりとした焼き芋のような食感に暴力的な甘さ‥ふおぉ、私もイモ天は好んで食べませんが、これはすごい!石焼き芋のライバルあらわる!

ユズの天ぷらとかどうなの?と思いましたが、シメにもってこいの爽やかさ。いやー、ソバも天ぷらもおいしゅうございました!

母「今日の天ぷらも良かったー!次はナスが出そうな時期に来ようか」

数年前に来たときは出ましたが、アレはうまかったなあ‥そうですね、そうしましょう。

食後はもちろん蕎麦湯です。湯桶ではなく粉引の‥なんて言うんだこれ。とにかく大きいマグのような器に入ってきます。もちろん弓立窯さんの作品でしょう。

ちょっと蕎麦粉を足したかな?という濃いめの蕎麦湯で美味しいツユをいただきましょう。どうでもいいですが、私は蕎麦湯の時に全ネギを投入する派です。ワサビはソバにのせて食べたり、そのままなめたり。

うぁー、良きツユで飲む蕎麦湯は最高だ〜。いやー、ソバ・ツユ・天ぷら・器の全て良し!店員さんも親切だから五拍子そろっちゃうのね!繁盛するわけです。

帰ろうと思ったら、おお?母のソバの皿、これはウチにないけど見事だな‥!また買わねば。ここに来ると欲しい器が増えて困ります。

母「もう食器棚のスペースがないけど、このお皿ならしかたない」

 

とき庵 埼玉県比企郡ときがわ町西平756-4

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