「もうすぐ春だからあそこに行こう。きっと面白い天ぷらがあるよ」
いきなり母ではないですか。天ぷらであそこということはあそこですね。好物のノビルにはまだでしょうが、気の早い山菜が顔を出しているかもしれない。行ってみましょう。
目指すはときがわ町の人気蕎麦屋「とき庵」さん。たしか11時半開店ですが、最初のターンに遅れると結構待つことがあるので早めに出発したらフライング気味の11時15分に着いてしまった。
母「でも駐車場に車が何台もあるね」
あらほんと、7・8台ある・・それなのにお店の前に人がいないということは早めに開店しちゃったということか。慌てて入りましょう。
おっと、その前に本日の天ぷらをチェックしておかなくては。ふきのとうとセリがいやがうえにも春で良さそうですね。
2人ですが大丈夫ですか?よかった、座敷席が2卓だけ空いていました。その後すぐにもう1組来たので、なんと通常の開店時間前に満席となりました。
母「早めに出てよかったね」
いや驚いた。今後も早めの到着を狙った方がいいかもしれません。
店名入りのかっこいい湯呑みでお茶が出されます。お茶もいいけど器もいいねぇ、というわけで、こちらのお店は器が素敵なんです。この近くの窯元の作品なのですが、好みすぎて取り寄せて愛用しております。
来るたびに頼みたいけど結局頼んだことがない試行錯誤の鴨汁そば。いろいろ試した結果は果たして・・
母「じゃあ頼んでみれば」
しかしですね、天ぷらにせりがあるらしいので今日もオミットの予感。
辛み大根のおろしそば・・地元産の辛味大根を注文後におろすとか大変じゃないですか。しかも旬野菜のかき揚げがつく。これもいいなあ。
母「じゃあ頼んでみれば」
しかし天ぷらに人参があるらしいんですよ・・
地鶏卵のざるそばも面白そうだな〜と見ているところで、隣の家族連れのお子様がこれを注文していた。
母「じゃあ頼んでみれば」
ついてくるのが南瓜の厚揚げ天ぷらというのが・・芋となんきんの天ぷらって訴求力に欠ける気がしませんか。
母「かぼちゃは好きだけど、ここに来てそれだけはさびしいね」
まさにそこなんですよ。
母「メニュー見る必要あった?」
というわけで、やはり堂々たる人気No.1の地山菜の天もり蕎麦に決定。
入口で天ぷらチェックした時点で決まってはいたんですけどね。
おろしそばの大根すら注文が入ってからおろすくらいのお店ですので、料理が出てくる時間はのんびりしたものです。お茶をすすりながら待つこと20分ちょっとで届いたお盆の上はもう大変、絵にも描けない美しさです。
ざっくりとした織部の皿に盛られた黒いそばは、瑞々しいけどビショビショではないという素晴らしい水切り。
ちょっと甘味が強いつゆを半分くらいつけて、ズルッとすすって何度か噛めば鄙びた香りが鼻に抜けていきます。鴨汁そばが試行錯誤ということですが、そばそのものもどんどん美味しくなっている気がしてならない。
小鉢でそば豆腐がつきまして、薬味はネギとワサビです。ネギはそば湯用に全量残しておいて、ワサビをちょいちょいつけながらすすっていくとしましょう。
そうでした、緑・赤・黄と色とりどりのてんぷらぱれっとを揚げたてのうちにいただかないと。
最初のお宝は・・ふきのとうだ!春だ!ほろ苦くてサックサクじゃ!あれ、母はふきのとうってあまり好きではなかったですよね。手伝いましょうか?
母「それがここの天ぷらだと美味しいんだよね〜」
あらホント、もう無い。
エシャレットは生の時の辛味が甘味に化けて、ネギネギしい香りはさらにアップ!まるでノビルのような鮮烈さで非常にウマい。
母「ウチでもマネして揚げてみたら甘くはなったけどこんなに香りがなかったよね」
うま〜く水分を飛ばすことによって香りが濃縮するんですかね。
個人的に一番楽しみでした、せり!ただでさえ素敵な香りが天ぷらになってさらにアップ!パクチーやミツバも揚げてくれないかな、親戚だし。
母「せりなんて普段絶対に食べないのに、悔しいくらいおいしいね〜」
あらっ、コレはこちらに来ると思ったのに!なんですかとき庵さんの天ぷら力は。
人参の天ぷらはよくあるかき揚げではなく、拍子木状にズドンと一本です。初めてこちらにお邪魔した時、ナスと人参の天ぷらのウマさにKOされたんだよな〜。
母「金時にんじんなの?なんでこんな甘いの?」
よくわかりませんが、人参嫌いが2秒で改心するおマチばっちゃんの人参はこんなだろ〜なと。
先述したように芋と南瓜の天ぷらにはあまり箸がのびない私ですが、こちらの安納芋はそんなことを言っている場合ではありません。
母「すご〜くよくできた焼き芋みたいだね!」
甘味はもちろん、ねっとりとホコホコの綱引きがすごい!ぽっくぽっく、へにゃって感じですか(わからん)。
ゆずの天ぷらなんて驚くじゃありませんか。これがまた酸味と香りがギュッと詰まってこの上もなく柚子!油ものなのにあらゆる口直しにいいのでは?
母「これはマネしても絶対こうはならないね」
イカ以上にペチペチーンと跳ねて熱い思いをする未来しか見えませんな。
これまた好みど真ん中の青織部でそば湯が来ました。そば猪口というにはたっぷりしたお碗に注いでほっこりといただきましょう。ウマいツユはそば湯でのばしてもしっかりダシの味。ウマいなぁ。
母「やっぱりここは美味しいよね〜。もっと来なきゃダメだよ」
11時15分を狙って来るというワザを覚えたので、季節ごとに来るとしましょうかね。
とき庵 埼玉県比企郡ときがわ町西平756-4