「もう秋になるけど、ちゃんと予約してあるんだろうね」
いきなり怖い顔をしているのは母じゃありませんか。なんとなく秋の恒例になってしまっている加賀屋さんでしょう?いやだなあ、春のうちから予約してありますよ。
母「そっちは知ってるよ。お寿司は?」
ああ〜、行きに必ず寄るあそこですか。そうですね、有名なガイドにも載っている人気店ですもんね。電話入れておきます、はい。
母「行きだけじゃなくて行き帰り両方だからね!」
そういえば去年は「明日も来ます」っていきなり言い出しちゃって、大将困ってましたもんね‥わかりました、2日連続で席のお願いをしておきます。
そして当日となりました。5時に出発して、まずは富山の氷見へと向かいます。道の駅ひみ番屋街でこれでもかと氷見うどんを買い、11時25分になったので移動しましょう。
道の駅から車で3分、到着したのは「すし屋の城光」さん。駐車場は道を挟んだところにある空き地です。
開店待ちをしていた女子二人組の後について入店しようとすると、巨大な10人乗り車両がお店の前にやって来た。やっぱり人気店だ、予約しておいてよかったとカウンター席の左隅2席をいただきます。
デカい車の人たちは奥の座敷で宴会らしく、開店前から準備で大忙しだったようです。10分くらいたってから「お待たせしました、はじめますね〜」と大将。どうやら自動的に握り12貫と決まったようです。お昼に来る人はだいたいソレだもんね。
ホワイトボードの本日のネタを見ながら12貫のメンバーに想いを馳せるのがお楽しみ。甘エビ白エビバイ貝はレギュラーだから間違いないとして、カマスとカジキあたりは出るや出ざるや。どっちも食べた〜い。
目の毒だけど、いちおうドリンクメニューも見てみるか。富山をはじめ北陸の銘醸が揃って‥あれれ、ちょっと安すぎやしませんか?やっぱり夜に来てノドグロやブリで飲まなきゃいけないよな〜。しかしこの辺って宿がないんだよな〜。
お寿司屋さんのお茶はおいしいから昼はコレでよし。
大将「まずはアオリイカですね〜。お味はついてますのでそのままどうぞ」
北陸のアオリイカはまさに旬のまっさかり!イカ界でも甘味で言えばぶっちぎり。塩と柑橘のみ、そこを酢も甘さも控えめな酢飯と合わせれば‥イカは噛めば噛むほど甘くなる。絡んだご飯も一緒に甘くなる。これだ、これが握り寿司だ。
大将「白身の高級魚、アラって魚ですね〜」
クエの俗称ではなくアラという魚です。まあクエもアラもどエラい高級魚には変わりないけど。
いや〜、数年前このお店でアラの美味しさに目覚めちゃったんですよね。深い旨味と固い一歩手前な爽快な歯ごたえ、白身のゴールの一つじゃないかしら。
大将「ウスバハギってカワハギの仲間です。上に乗ってるのは肝ですね〜」
ハギの身と肝って、恐ろしいほど酒を呼ぶモストデンジャラスなタッグじゃないですかーやだー。しかもお味はポン酢とか最高か‥くぅ〜、うめえ。
ここでキューと行きたいけれど、涙を飲んでガリをかじる。やはり生姜そのものを活かした控えめの味付けで、さっぱり効果絶大なんです。
大将「こちらはカマスですね、そのままどうぞ」
青魚とも白身ともちょっと違うカマス特有の香り。炙られることでその香り、特に皮部分の風味がグーンとアップ!炙って握るとこんなに素敵な魚だったのか‥お寿司屋さんでカマスを見たら必ず注文、覚えた!
富山を歩けば白エビに当たる。そのくらいお土産等に使われている富山湾の象徴、白エビ。そして日本海のお宝甘エビ。美しく甘い素敵なコンビ。
ところで大将の背後にあるサイン色紙なんですが、もしかして北勝富士関ですか?
大将「そうなんですよ、巡業の時に来てくださって。本名で予約の電話くれたんですけどね、いざ来たのがお相撲さんじゃないですか。ご飯足りるかヒヤヒヤしちゃって」
あの方って中村さんでしたっけ?それじゃ分かるはずない、ご飯をいっぱい炊いておこうとかなりませんよね。お相撲さんはちゃんと四股名で予約しましょう。
大将「はい、石川の毛ガニになりますね〜」
日頃食べないカニですが、こちらに来た時はいただきます。そして食べるとやっぱりうまいんだよカニ。ケガニミソフォンデュやってみたいなあ。
この辺で味噌汁が登場。味噌は控えめ、ダシが豊かに香るところにふっくらつみれがうめえのなんの。飲んでいる途中だったら酒の甘味リセットにちょうどいいんだろうな〜。
でっかいミルでガリガリとコショウを振りかけたのはバイ貝!必ず登場する、こちらの売りの一つでしょう。
コリッコリのところにピリリと黒コショウが効いて、食べるたびに思うのはこいつの時だけはビールが怖い、切実に。
大将「生イクラです。北海道のを漬けてみました」
富山でいただく北海道の赤石〜!歯を立てるまでもなく、舌で押せばはかなく破けてうまうま汁がとろけ出る。まさしく食べごろ、旬オブ旬!
大将「昆布締めはヒラメですね。そのままどうぞ〜」
道の駅の鮮魚コーナーを見ましたけど、やたらと昆布締めが売っていましたね。富山の方って白身魚を見ると昆布でシメちゃうフシがある。なぜかって?身の水分が抜けて旨味がブーストされてとんでもなくうまくなるから!締め用のでっかい昆布なんか売っているのも納得のお味です。
大将「こちらはカジキ、バショウカジキの腹身ですね〜」
某カメラマンが大好きなマカジキは冬の魚ですが、バショウカジキさんの旬は秋らしい。
あまり脂がのる魚ではないはずだけど、腹身になるとトロっぽい雰囲気もあるのね。淡白ながらもしっかり旨味のあるマッチョ部分と甘味たっぷりトロける脂が両立、これは新世紀ツンデレか。いやはや、カジキの握りはもっと流行るべきだ。
大将「ハガツオっていうこの辺でとれるカツオの仲間ですね〜。一応これで終わりになります。何か食べたいものあればどうぞ〜」
カツオと言うには色も鉄っぽい風味も淡め。でも底味というか旨味が深いな。タタキの燻香が効いて、こりゃ日本酒を呼びすぎだなあ(お茶ズズー)。
母「カツオってあまり好きじゃないけどここのは美味しいんだよねえ。ああお腹いっぱい」
いや〜、日頃ロクに食べない母が12貫ペロリですか。小ぶりとはいえたいした、たまげた。よっぽどここの寿司が好きなんだな。
さてぼくはもう1貫だけいただきましょうか、何がいいかな。
カマスをリピートしたいしカツオとカジキももう一丁行きたいし、なんか青いのがいれば食べたい‥しかしやはりアレだな、ここ以外であまりお目にかかれない物‥やっぱりアラか!
とにかく握りとしての完成度が高すぎるんだよアラってやつは。15個くらい並べて飲みたし、飲みたし!
いつも通りかいつにも増してか、とにかく大変美味しゅうございました。それではまた明日お願いします。
大将「ありがとうございました。良い加賀屋を〜」
ここの次は加賀屋って知っているのね。毎年このとですからね。
チェックインにはまだ早いので、ちゃんと観光もします。今回は母のリクエストでひがし茶屋街。初めて来たけどこりゃまちがいなく名所だ、いいですね。
修学旅行の学生さんたちも楽しそうだ‥ぼくは高校が男子校だったので、修学旅行は暑苦しいというか地獄の行軍というか‥マクドのアニメCMのような青春を送ってみたかった。共学だろうがキモヲタは変わらない?弱者は弱者?はいおっしゃる通り。
すし屋の城光 富山県氷見市間島1-50