「秋になったら加賀屋とお寿司に連れていくんだよ」
まだ5月だというのに気が早いことを言うのは母じゃないですか。
もっともコロナ騒ぎがある程度落ち着いた場合、GOTOとかワクワクとか変なのが始まっちゃうかもしれないのか。取れなくなる前に予約を入れた方がいいかもしれませんね。
加賀屋予約センターに電話して・・「え〜と、10月の白韻・・いや、天游の空きは」・・よせやめろ、なに口をすべらせている自分。いくらすると思っているんだ・・あ〜あ、予約取れちゃった。
落ち着いたのかあきらめたのか知りませんが、やることになった旅行支援。開始直前の10月初旬に出発しまして、まずは道の駅 ひみ番屋街に到着です。
そうか、氷見は先日亡くなった藤子A先生の故郷でしたね。魔太郎も顔出しに入れてあげないと恨みの対象にされませんか?大丈夫?
母「氷見うどん美味しいからお土産でいっぱい買わなきゃね」
それではちょっと時間がかかりますかね。ではその間にぼくは酒屋さんに行って、友人にお酒を送ってきます。
酒屋さんから戻ったら、なぜかシャッターが閉まっている・・なんだ、何が起きた。
母「うどんいっぱい頼んだらね、包むのが間に合わないって閉めちゃった」
なんですそのマイケルジャクソンみたいな買いっぷりは。店員さんたらかわいそうに、あんなに箱を並べて・・
ちょっと待ってください。そんな量の乾麺って相当な重さですよね。車まで運ぶのは誰なんですか・・他にいないよな、困ったな。
うどんをたくさん運んでお腹が空きました。予約の時間も近づいたし、お昼を食べに行きましょう。ひみ番屋街から車でわずか3分くらいにあります「すし屋の城光」さんに到着です。
母「一年ぶりだよ。楽しみだなあ」
有名ガイドに掲載されたりしている人気店なので、土日は予約必須レベルです。開店の11時半からお願いしておいたところ、すでに駐車場で待っている人がいた。みんなウマいもの好きだね。
カウンター席に座り、メニューを拝見・・するまでもないな、地魚おまかせ12貫を2人前お願いします。
大将「すみませんね、ちょっと値上げしちゃって」
いやいや、むしろ今までが安すぎだっだと思いますよ。
ホワイトボードを見ながら本日のセトリを予想するのがまた楽しい。黒ムツは出るとすれば炙りかな〜。
大将「これから加賀屋ですか?」
その通りです。加賀屋さんと城光さんはセットです。加賀と言いつつ能登なんで近いんですよ。
飲み物はお茶です。無念です。車でないと難しい立地なので、だいたいのお客さんはお茶です・・と思ったら、後から来た人がシュワシュワを頼んでいた。くそ〜。
大将「まずはアオリイカですね〜。そのままどうぞ」
塩で引き立つとんでもない甘味と旨味!イカの王様はダイオウイカではないくアオリイカだ!
高級魚のアラが登場。締まった身とほどけるシャリの見事なコンビネーション、アオリイカに続いてこれまた旨味が強いこと。
母「おいしいねえ。やっぱりお寿司はここがいいねえ」
あらかじめネタに合った味をつけてくれるから、醤油をつける一手間がないのもいいですね。おいしさだけでなく食べやすさまで、ミスター味っ子必勝の法則。
ウヒョ〜、見事に正解は黒ムツの炙り!炙ったお寿司は大好物じゃ〜!
大将「周りはノドグロばっかりなんですけど、ウチは黒ムツを使いますね。金額ほど差がなくて、しっかり美味しいと思いますんで。でも最近バレてきたのか値段上がってるんですよ」
いいですね、はじまりましたね。大将のボヤきを挟みつつの説明大好き。
大将「甘エビと白エビですね。今日は甘エビのミソが良かったんでね、卵と一緒にのせましたんでそのままどうぞ」
白エビの美しさを損ねないよう、ごく軽く塗られた煮切り。そして甘エビの上の美しいミソ!くあ〜、こりゃ日本酒飲まなきゃウソだよ!と、熱いお茶をすする。お寿司屋さんのお茶は必ずウマいんですけどね。
お寿司屋さんで必ずウマいといえば、汁物を忘れてはいけません。滋味そのものといったつみれ入り味噌汁に、ふは〜とため息。北陸に来たなあ〜。
大将「毛ガニです。ミソも一緒になってます。そのままどうぞ」
母「カニだよ。食べてあげようか?」
ふはは、ジンマシンができたなど過去の話・・というか、アレルギーでなく食べすぎのヒスタミン中毒だった説。いずれにしても軍艦の1つ程度は全く問題ありません。
母「あれ?このカニすごく美味しくない?」
めっちゃめちゃうめえです。ミソの味が濃いのに清々しくて、モクズや上海のソレのクリアな旨味というのか。氷見の毛ガニってこんなにウマいのか!
こちらのスペシャリテの一つでしょう、バイ貝に挽きたての黒コショウ!コリッコリの身にスカッとした香り、ツマミとしての握りの頂点・・いや、お茶だけどな!でもやっぱりウマいよ、うん。
大将「こちら生イクラをウチで漬けたものです。今の季節だけですね〜」
なんという美しさでしょう。粒の固さもまさしく頃合い、優しくはじけてけしからん汁が飛び出すじゃないか。問題はアレだ、ほんのひと口すぎるっ!
これまた煌めくように美しいのはアジですか!大衆魚とは思えない。以前はもうちょっと多めにポン酢がかかっていた気がしますが、今回はごく最小限ですね。脂乗りとかで変えているんだろうな。
大将「ブリはまだなんでね、氷見のヒラマサです。そのままどうぞ」
こちらのブリしゃぶで一杯やるのが夢なんです。でも雪道が苦手というか、立ち往生が怖くてね・・というところでそうだよ、雪がない時期にはヒラマサさんがいるじゃないか。寒ブリのような脂乗りこそないけれど、ねっとりまとわりつくような旨味は勝るとも劣りません。
大将「これでおまかせの最後になります。本マグロですね。そのままどうぞ」
え、マグロが出たのって初めてかも。そして・・見ただけでわかっちゃいましたね。
母「おいしいね〜。どれもおいしかったね〜」
ここに来ると「お腹いっぱいだからコレ食べて」が絶対にないですからね。
母「おいしいものはなんとしても食べなきゃ」
握りが小ぶりだし美味しいし、もう1つくらいイケそうな腹具合。青いところが欲しいのでサバかイワシか・・前にサバは食べたな、イワシをお願いします。
大将「イワシは軽く締めてありますけどいいですか?」
うほっ、最高です。ぜひぜひ。
出てきたイワシさんはご覧の通り、日本刀を思わせる鈍く妖しい光がたまりません。ごく軽い酢で身が引き締まって・・これでお茶とか殺生なんてレベルじゃねえぞ。やっぱり夜に来ないとダメなんじゃないか?東横インさん、氷見に進出願います。
そしてお会計時、母が何か言いたそうな顔をしている。まさか・・あの技を出すつもりでは?
母「あの〜、明日のお昼は席があるでしょうか」
や、やっぱり〜!やりおった!
母「こんなに美味しいんだもん、こっちに来た時に食べだめしないと」
大将「へへへ、困ったなぁ・・分かりました、お席取っておきます」
というわけで、2年ぶりに「また明日来ます」の術が炸裂したのでした。土産物店閉鎖といい、加賀屋に着く前から飛ばすなあ・・
すし屋の城光 富山県氷見市間島1-50
ひみ番屋街 富山県氷見市北大町25-5