福島を縦断してからの宮城入り、そして進路を変えて一路西、山形に向かいましょう。
ちょっと時間があるから有名な山寺に寄ろうかな〜と軽い気持ちで来てみたら‥そうでした、ここって千段にも及ぶ石段があるのでしたね。ワハハ、来ちゃったものは仕方ない、登ろう。ひぃ〜。
ヘトヘトになって宿に向かいましょう。山形が誇る名山、月山のふもと西川町にあります「山菜料理 出羽屋」さん!山菜料理といえば出羽屋さん!というくらいの名店であります。
お昼の名物は山菜そば、宿泊の名物は山菜フルコースですが、今は秋。山菜なき時期の名物は‥?そう、キノコのフルコース!
「キノコの時期になりました」というお葉書をいただいたので、のこのことやってまいりました。
広々とした部屋に案内していただいて、風呂に入ったり転がってみたりして夕食の時間を待ちましょう。
夕食は部屋食ではないですが、別の個室でいただくスタイルです。
食事用個室に案内してもらったのはいいですが、担当の方が卒倒してしまいそうな美女じゃないの。
勝手にドキドキしてしまう‥落ち着くために素数を‥いや、卓上にある本日のメニューで気を散らそう。「かのか とびたけ ますたけ‥」なんだよ、謎の固有名詞ばっかりじゃないか!これはこれでドキドキしてしまう〜。
ズラリと並んでいる前菜と小鉢たちは器まで美しい。どれもこれもお酒に合いそうじゃないですか。そうだ、お酒をお願いしないと。
生ビールの選択肢が中ジョッキと1.8リットルというのがすごいな。月山の地ビールもあるのか。
おすすめの地酒は銀嶺月山がメインらしい。純米大吟醸の720mlは7800円‥これはちょっと予算オーバーかな。
出羽桜もあるのか〜。このメニュー以外に魔斬とか山形の銘酒が揃い踏みですね。悩むなぁ。
「こちらには書いてないのですが、四合瓶でしたら九郎左衛門・雅山流閃というお酒があります」
なぬっ‥!頒布会でしか手に入らない希少酒じゃないですか!ちなみにおいくらでしょう?なんと四千円とはお手頃価格。ぜひともお願いします!
菊の花びらを浮かせた花札に出てきそうなお酒と雅山流を並べてカンパーイ。キノコ祭り開始、開始〜。
数年前、春に来た時はこれでもかという山菜料理のオンパレードで満腹を通り越した記憶があります。そんなわけで昼に白石うーめんで胃を休ませたり、石段を登ってみたりしてバッチリお腹を空かせてからの挑戦です。
「山葡萄の汁を蜂蜜で味付けしたものです」
まあ、これは濃厚な山の香り!こちらにカブを漬け込めば至高のマッシュルーム詰めとも戦えますね。
こちらの美しい大皿に乗るのは、かのか・とびたけ・ますたけ・山伏茸・うらべにほていしめじ…だそうです。
右14時方向の大根おろしが乗ったものが山伏茸ですね!山伏の衣装のモコモコに似ているから。汁をたっぷり吸い込む形状なので大変おいしいです。
真ん中の‥ますたけだったかな?鶏ささみみたいな食感で面白い。うらべにほていしめじはほんのりとした苦味と不思議な香り。美味しいのかなんなのか、でもクセになりそうな不思議な風味です。
こごみの胡麻和えはさすがの名物、こんな時期でも風味が生きていますね。とびたけのぬた和え‥ぬたって酢味噌和えのことじゃないの?
「この辺ではずんだのことをぬたと言うんです」
まあ、さわやかな味のずんだがキノコに合うとは。面白いなあ。
なめこと菊とみずこぶの酢の物!なんとなめこの酢の物!ビックリしたけどトゥルトゥルのなめことシャキシャキとしたみずこぶが楽しくて、菊の香りと酢が酒の口直しにピッタリ!
きぶのり・ほうきたけ・ぬきうち・さくらしめじ・かたくり煮‥未知の食材ばかり並びます。
「今きぶのりを食べられるのは日本でもここだけと思います。仙人が食べたという苔なんですよ」
左から2番目のやつですね‥ここでしか食べられない、しかもコケ!いただいてみるとコケ臭さとかはなし、というか味もなし‥
「味はくるみ味噌の味だけです。歯ごたえを楽しむものですね」
ひじきのような柔らかさがあり、キクラゲのようなクッキリシャッキリ感もある‥仙人はこんな面白いものを食べているのか。
発酵させないと固くて食べられないぬきうちってキノコとか、干しカタクリを戻して煮たものとか‥月山の恵みもすごければ昔の人の知恵もすごい。
菊と木耳の酢ぐるみ和えですね。山の料理はくるみがキモなんだなぁ。
「山形の菊といえば紫のもって菊が有名ですけど、黄色い菊もおいしいんですよ」
くるみでコッテリになった木耳に菊の香りを組み合わせると‥これはいけない、とんでもなくツマミ力が高い!なめこの酢の物もそうだけど、菊の花ってこんなにお酒を呼ぶものとは知らなかった。
「こちらはまさに珍味中の珍味ですけど‥大丈夫ですか?」
大丈夫も何も大好物です。イナゴかわええ。
「よかったです。食べられないって方もいらっしゃるので」
白メシとイナゴだけの弁当を作ったことがあるくらい好きなんですよ。
まあ、サッと薄味ですごくおいしい。売っているイナゴは保存のためばっちり甘辛ですが、やはりこのくらいでないとイナゴさんの風味は楽しめません。
「六浄豆腐のお吸物です。山伏さんが山に入る時に持っていく固いお豆腐で、ナタで削ってお湯にひたして食べたそうです」
ほうほう、昔の携帯型タンパク源ですか‥フタを開けたら素晴らしい香りが‥なんと松茸入り!わーい!
かぐわしき香りに浸りながら六浄豆腐をいただきましょう!
なるほど、戻してあるから湯葉のような舌ざわりですね。味も塩味がついた湯葉といった感じ‥やはり基本は豆腐なんですね。六根清浄とか言いながらこんな美味しいものを食べていた山伏、けしからん。
「今ではこの辺の一軒だけでしか作られていないんですよ」
そんな貴重なものを松茸と一緒に吸物に仕立てるなんて‥ここでしか食べられないものの連チャンでホントにどうしようというところ。今回は前菜が済んだところまで。次回は主菜たちの登場です。
山菜料理 出羽屋 山形県西川町間沢58