肉とねぎとを蕎麦屋さんの出汁で玉子とじに!なるほど「すき焼き重」だ! 美むら庵(邑楽郡大泉町)

一年最後の更新なので年越し蕎麦がわり、蕎麦屋さんの話です。もっとも蕎麦率三割くらいですが気にしてはいけません。

かかあ天下と空っ風のグンマ、師走の風が冷たすぎるのよ。こんな時のランチは温かい麺がいいな。よし、鴨南蛮とカレー南蛮の両面待ちで蕎麦屋さんに行くとしよう。

大泉町の坂田交差点近くにあります「美むら庵」さん。創業40年以上、蕎麦屋さんとしてはこの辺で最上位の老舗ではないでしょうか。

大ベテランのご夫婦だけで営んでいるため、たまに暖簾が出ていなかったりしますが‥今日はOKみたいだな。あれ、その暖簾が新しくなった?空っ風のせいでよく見えないけど。

先客はテーブル席に一組。セルフのお冷やを注ぎ、3つ4つあるカウンター席に腰かけます。

もり550円からと、お手頃どころではない平成初期プライス。これでも一年くらい前に値上げした価格と言うから信じがたい。だってホラ、たぬきが580円で月見たぬき600円ということは‥卵が20円になっちゃうよ?せっかくのトッピングなんだからそこは儲けましょうよ。

お目当てのカレー南蛮は650円で鴨南蛮は800円。ポケットの中に一枚いる北里柴三郎でお釣りが来る鴨南蛮!

厨房の方から心躍るソースの香りが漂ってきたぞ。先客の誰かがヒレソースカツ丼を頼んだのか。

おかげで急にご飯ものを食べたくなっちゃったじゃないの。すき焼き重‥はるか昔に出前で食べたきりだからあまり記憶にないんだよな。行ってみるか。

看板娘さんがお冷やを持ってきてくれましたよ。

女将さん「あら自分で持ってきてくれたの?じゃあダブルで置くからいっぱい飲んでね」

ワハハ、昼からダブルとか決めさせんでください。せっかく来ていただいたので注文しちゃおうかな。すき焼き重冷たいそばでお願いしま〜す。当初の思惑であった温かい麺のカケラもない注文である。

今度厨房から漂ってきたのは、心をとろかす甘辛な香り‥これはぼくのターンだな‥ホラ登場しましたすき焼き重!フタつきの重箱を見てウナギでも頼んでしまったかとドキドキ。

パカっと小宇宙オープン!ふわあ〜、湯気と共に立ちのぼる香りは‥す、すき焼きだ!まさしくすき焼き重だ!

まずはオマケの冷たいそばからいただきましょう。ナルトとキュウリがいかにも涼しげです。寒い寒いと来たのになぜ涼しげなモノを注文しているのだろう。

キリッと締まった滑らかなそば。なんだか以前いただいた鴨南蛮の時より細くてキリッとしているような。温かいと冷たいで少し変えている?なんてことはないよね。

冷やかけ汁には天かすなんて散らしてくれて、オマケと言うには存在感がありすぎる。夏になったら冷やしたぬきを食べようと誓うのでした。

さてメインのすき焼き重だ。肉と玉ねぎと糸こんにゃくを玉子とじにして「すき焼き重」とは、あまりにもなるほどですね。

しかし甘辛の味ならお手のものである蕎麦屋さんだから、良く考えたら不思議でもなんでもない。出すお店がもっとあってもいいのでは。

肉はもちろんだけど、味がしみしみの糸こんにゃくで食べるご飯がこんなにうまいものだとは。美むら庵さんと言えば、この近辺では江戸前辛口の汁の嚆矢。その年季の入った返しによるすき焼き味ですからね、たまりません。

ご飯も炊き立てのタイミングだったようで、お重全体が熱々なんですよ。アヒアヒと小籠包のように口内ダメージを受けつつも箸が止まらない。いやしかし熱い、タンマだ。たっぷりのお新香とそばで口を冷やそう。お冷やも二杯あるしね。

温かいそばをすすりこんだ時以上に全身ポカポカ、ごちそうさま。

後から来たお客さんの「肉汁と鴨汁はどう違うの」という質問に「どっちも美味しいのよ」と禅問答のように答える看板娘さんを見てさらにポカポカ、非常に良いお昼となったのでした。

美むら庵 群馬県邑楽郡大泉町大字古氷11