つげ義春の聖地・山光荘。建物も風呂も素晴らしいんですが、実はご飯もおいしいんです 長八の宿 山光荘(加茂郡松崎町)

つげ義春の「長八の宿」のモデルとなった「長八の宿 山光荘」さん。一人旅OKになったので来てみたところ、想像を遥かに超える聖地っぷりにドキドキ。

聖地聖地と言っても本来は温泉旅館。接客・風呂・メシの三拍子が揃っていなくては50年以上も続くはずはありません。接客とお風呂にたっぷり満足したところで夕食タイム。

長八の間に宿泊すると倉の一階で食べることになります。風情のカタマリのようで嬉しいですね。

「お夕食は6時くらいでいいですか」ということでしたが、なんだか5時すぎくらいから一階で物音がして、5時半には「お客様、お支度ができましたのでよろしければどうぞ」ですって。ワハハ、早いな。いいですけど。

いきなり卓上にズラリと並ぶ温泉旅館式。思いの外と言っては失礼ですが、こりゃ豪華だなあ。

「お飲み物はどうされます?」

冷たいお酒を・・四合瓶ってありますかね。

おおっ、静岡県産米100パーセントの花の舞純米吟醸ですか!富士山がデーンといちまい加わってくれましたよ?なんと一本3千円という良心価格でした。

つげ先生が泊まった際は「魚はすべて白モノばかり」・・なんと、ほぼその通りだ。海老と大トロ以外はキンメにタイにその他もろもろ、とれとれの白身が揃います。

マナガツオを怖くしたような魚の煮付け。上に玉ねぎがのるのは珍しい。これまた白身であっさりめの味付け。結構ほじくり甲斐がありまして、掘っては飲んで掘っては飲んで。

見事な断面を見せてくれるのはでっかい伊勢海老。レモンとマヨネーズというシンプルな味がいいですね。これまたほじくり甲斐がありまして、掘っては飲んで掘っては飲んで。ミソうめえ〜!

今日はぼく一人で貸切ということでしたので、残り半身の行方が気になるところ。

後から揚げたての天ぷらが登場です。海苔に椎茸にピーマン、どれにもエビと白身のすり身が詰まっていて、いやはやこれは良いツマミだ。

そして香の物がまたうまいのなんの。結局例によってお酒を追加してしまったじゃないか。

この後はご飯と吸い物、フルーツでフィニッシュ。さすが茶どころ、煎茶とほうじ茶の両方が置いてあって嬉しい。ボリュームも味も大満足で、すっかり殿様気分です。

部屋に戻るとお湯入りポットの新しいものが運ばれてきました。でも冷たいものも飲みたいなとロビーに来たら、見た目もラインナップもあまりに渋い自販機がありました。CCレモンにウェルチって謎のビタミンコンシャス。

そして翌朝。朝食は8時と言われたのできっと7時半くらいになるだろうと、早めの朝風呂から待機・・7時50分に呼ばれた。普通だ。

これまたいきなりズラリと勢揃い。ほえ〜、朝からすごい品数だな。

モーニング刺身はなんだか偉くなった気分。ゲソがうまい。

小ぶりのアジの干物が旅館の朝ですね。変な脂くささのない逸品でした。

メシが進むといえばこちらの小鉢軍団ですよ。特に梅干しは絶対自家製でしょコレ!だって今どきなかなか出会えない、酸味も塩分も強烈なヤツ!中松警部大泣き、ぼくは嬉し泣き。

そしてこの玉子焼きよ・・甘味強めなれどご飯に合う、巨人・大鵬・玉子焼きのソレはこの味に間違いない。梅干しと玉子焼きだけで最強のお弁当ができると思うの。

風呂に行く時チラ見したところ、御年90後半の女将さんが厨房に立っていて・・もしかして手ずから巻いてくださった?ありがたいなんてもんじゃないよ!

「コーヒーをたてておいたのでよろしければどうぞ」なんて一言もありましてね、「コーヒーをたてる」んですよ!昨日の「おタバコは召し上がる?」に続いて、滅びつつある美しき接客語を聞いてしまいました。

身も心もノックアウトされてチェックアウトをお願いすれば、女将さんがしっかり手書きでお会計をしてくださるじゃないの。

「松崎町の割引がありましてね、3千円引きましたので」

・・え、四合瓶がまるっとタダじゃないですか!なんでこんな時期に割引をしているんだ松崎町。やったぜ。

お値段は部屋によって違いまして、一番お高い「長八の間」に一人で泊まって消費税込19800円と入湯税が150円でした。重要文化財級の部屋に泊まれて風呂とメシが素敵で2万円!ちょっと考えられないくらいの貴重な体験、つげ者はもちろんのこと、そうでない方もぜひどうぞ。

長八の宿 山光荘 静岡県賀茂郡松崎町松崎280

長八の間の様子はこちら

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