ここ十年ほどの悲願、庄内の「畑と相談」ランチをいただきました 知憩軒(鶴岡市)

夏だというのに温泉に行きたくなってしまった。どこがいいかな‥そうだ、山形県って「冷たい肉そば」とか「だし」とか夏向きの食べ物が多くて好きなんだよな。

しかもアレだ。山形といえば湯殿山、即身仏の聖地じゃないか。よし、お参りと温泉を組みあわせた旅程にしよう。決まってしまえばこっちのもの。最速で宿と食事と参拝の予約を取り「二泊三日 山形〜新潟 即身仏・温泉・うまいものツアー」に出ることとなりました。

まずは鶴岡市でお参りです。この旅では結局四名の仏様にご挨拶したので、後でまとめて書きます。その後は同じ鶴岡市の‥というか、行けども行けども鶴岡市なんですけど。ちょっと広すぎやしないか?(東北で一番広いらしい)

とにかく鶴岡市の田んぼや畑や夏休みっぽいバス停しかない道をひた走り、予約したお店に着いた‥とナビは言っているけれど、やっぱり畑だらけじゃないか。店はどこだ。

「P」と書かれた看板を発見。ざっと草を刈った車六台分くらいの空き地があります。猫がすごくビックリしたような顔の後、しかたね〜なという感じで駐車スペースを空けてくれました。

入口という立札があるぞ。この小道を通ってお店に行くの?非日常への入口すぎやしませんか?

小道の途中には色々な木が植えてあり、一歩ごとに桃源郷に近づいていくようだ。なんとそのまんま桃の木まである。いや〜、紅葉の時期なんか素晴らしいだろうね。

さあ「知憩軒」さんに到着です。リアル田舎、リアルおばあちゃんちといった風情の「農家レストラン」です。ついでに民宿でもあるそうです。何かの本で見まして、いつか行こうと憧れつづけて幾星霜。ついに念願叶う時が来た。

お一人で営業されているようなので、営業確認を兼ねて予約の電話を入れておきました。

お店前に貼ってあった駐車場地図。ナビで来るとたぶん図の右側の分かれ道で案内が終了します。直進と左折みたいな感じで分かれていて、まっすぐ行けば駐車場です。

「予約の方ですか、どうぞ」と奥の座敷に案内してくれた方は、当たり前ですが写真で見たそのまんま。ついにお会いすることができました。

不思議だ‥まるで違う声なのに、なぜかCV:市原悦子さんに変換される‥昭和のお母さんの代表みたいな方です。

広々とした座敷はまさにイメージ上のおばあちゃんちですね。祖父母と同居だったぼくにとっては建て替える前の自宅のようだ。な、なつかしい‥!

この竹はなんだろ。スキマから灰が見えるということは囲炉裏テーブルなのか。

「お茶をどうぞ。いま用意してきますからね」と立ち去る店主さん。どうやらメニューなんてものはなく、1,320円の畑と相談したおまかせランチ一本のようです。

お茶はほのかな甘味があって、たぶんカワラケツメイと思う。なんだか後をひくおいしさだ。ポットに入っているようなので勝手におかわりしてしまおう。

しかし不思議だ。7月でエアコンも扇風機も稼働していないし、温かいお茶も飲んでいるのに‥すこしも暑くないわ。木に囲まれた昔のうちってそういうものなのか。

「お待たせしました。こんなものしかできなくてごめんなさいね」と出てきたのがこちら。

伝統食と保存食。今どきどこを探しても見つからない。「こんなもの」とはなんぞやという大ご馳走じゃないですか。

メインの膳はまさしく一汁三菜。見ただけで健康になってしまいそうだ。

さらにおやさいの小(中)鉢が四つもついてしまって、理想の食事そのものです。

目移りしちゃうけど、やはり初手は味噌汁ですかね。

なんと丸〜い味噌の風味だろう。出汁も塩気もとにかく穏やかです。優しいです。わずかに感じる熟成の香りが快い。しみじみうまいとはこういうことか。

ご飯はこれぞ銀シャリという輝き。ふりかけのようなものは紫蘇の実の醤油漬けか。これがとんでもないメシどろぼうで、本気を出せば一膳や二膳はたちどころ。落ち着け、まだオカズに手をつけていないのだ。

凍み豆腐と昆布としめじの炊き合わせ。豆腐から染み出す滋味の汁、クニャクニャではなく食感が残る昆布。あまりのうまさに思わず目を閉じて、ふぅ〜と一息。

ナスとししとうは揚げ浸しでいいのかな。ししとう‥これって普通のししとうで合ってます?青ピーマンをさらに香り高くしたような青々しさ。ドうまい!

庭のナスが毎日ポコポコ穫れてどうしたもんか困ってますが、こんなうまいナスなら少しも困らない。人生のナス料理でも最上位です。

調理中に漂ってきた魚の香りの正体は身欠きニシンさんだったのか。まるで京都に来たかのような美しい盛り付け。

なんとふっくらと豊かに戻っているのでしょう。木の芽が効いて、コレは‥すっっっっっごく飲みたい。困る。

ニシンのお布団になっている芋が存分に旨味を吸って大変。芋のくせにとんでもないオカズパワーだ。

ワラビ?ミズ?まあとにかく山菜。醤油漬けでもシャキシャキ気持ちいい。

体感温度が3度は下がる、爽やかこの上ないきゅうりの酢の物。

好物のゴボウはふっくらとシャッキリが同居して、一層好きになってしまう。ゴボウが好きになった頃、男もブサイクが好きになったとおっしゃったのは向田邦子先生でしたか。いや、このゴボウに関してはイケメンです。

切り干し大根も‥ダメだ、全てがうまくて語彙を失う。うまくて‥うまいんです。ちょっと感動が過ぎて魂が抜けてしまった。全体的に言えるのは、醤油の色はあるけど塩気は薄めで旨味が濃い。端的に言えば、うまい。

お支払いの時に店主さんのご著書を買ってしまいました。長南さんということは、鶴岡の霊能力者・長南年恵さんと何か縁があるのかしら?あちらの方は万病に効く霊水を呼び寄せたと聞きますが、こちらのお料理も健康的この上なく、無病息災間違いなし。スタンドはしっかり受け継がれている模様です。

毎日食べたいですと言ったら「移住しな」とやっつけられてしまいました。

「大したもん出せなくてごめんね。夕ご飯はもっとご馳走になるから今度は泊まりに来てね」

え〜!もっともっとご馳走が出てしまうのですか?しかも泊まりならニシンやナスで一杯やれちゃうじゃないの!一泊二食で7,000円?そんなの泊まる泊まる、泊まります!

いつがいいかな‥やはり馬も肥ゆる、田畑や山が全力を出す秋ですかね。冬季休業直前くらいを狙って予約しま〜す。

知憩軒 山形県鶴岡市西荒屋字宮の根91

「ここ十年ほどの悲願、庄内の「畑と相談」ランチをいただきました 知憩軒(鶴岡市)」への2件のフィードバック

    • 料理もビジネスも達人なのです。夜と朝にこんなご飯が出るなら泊まらないワケには

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