
大晦日、なぜか京都にいました。
年越しと言ってもテレビは見ないし、恒例行事などもない。ならばどこにいても良かろうということで、単なる思いつきです。
メシも思いつきでふらりと‥と思ったけれど、大晦日ともなればお蕎麦屋さん以外やっているのかどうなのか。難民化もイヤなのでしっかり予約しておきました。決めたのは年越し寿司!おめでたさレベルでは蕎麦より強そうでしょう?

年越し蕎麦がわりか、一蘭などのラーメン屋さんは行列だらけ。それらを尻目に祇園へと向かいます。たどり着いたのは新橋通沿いにあります「京都 鮨ノ蔵」さんです。
札幌の予約が取れないお寿司屋さん「鮨ノ蔵」さんの「のれん分け」ということですが、なぜ京都で。果たしてどんなお寿司をいただくことができるのでしょう。

18時の開店早々一番乗り。カウンター8席の店内は‥おや、ぼくだけ?
大将「今日は遅い時間の方が多いので、しばらく貸切です」
タイマンですか!こいつは面白くなってきたぜ。
メニューは22,000〜24,000円のおまかせコース一本。その日の食材で値段がちょっと変わるらしいです。

注文するのは飲み物だけ。最初なのでフレッシュというか飲み口の良いというか、スッキリした感じのお酒をください。
そんな無茶ぶりに応えてくれたのは宮城の伯楽星 純米吟醸。わずかな吟醸香と柑橘のような風味。なるほどフレッシュで飲み口が良い、言ったまんまのお酒だ!

まずは温かいものから、ウニとかぶらのすりながし。良いです。沁みます。今年おつかれ。ダメな年だったので来年はなんとかしましょう。

お造りはなんとアズキハタの炙りに自家製カラスミ。中華では清蒸に使うような高級魚に高級珍味をふりかけちゃった!
程よい歯ごたえ、滲みでる旨味。自家製カラスミならではの柔らかい塩味で甘味が引き立ちます。

続いては「くもこのおでんみたいなもの」だそうです。美味しい出汁に浸ったタラ白子。いや、これはどう考えてもうまいですよズルい。

数の子チーズ、カズチー。ねっとり濃厚なチーズとパリパリ数の子の取り合わせが楽しいのですが‥いや、それにしても美味しすぎやしないか?この蠱惑的な香りは‥もしかしてトリュフ?とんでもないおつまみもあったもんだ!
こんなうまいものをいっぺんで食べてしまってはもったいない。お寿司タイムまで少しずつつまむ格好でもよろしいですかね?
大将「それはもちろん、ごゆっくり楽しんでください」

京都のお酒をお願いしたら、お店の外かどこかに飛び出してしまった。抱えて戻ってきたお酒は澤屋まつもと。うん、間違いなく京都だ。しかし冷蔵庫どこにあるんだ。

次は揚げ物の登場だ。フエフキダイときのこのミニ春巻きですって。味もほんのり中華できのこの旨味もたっぷりでイイデスネ。

カラシナのおひたしに土佐酢ジュレと山芋。おひたしで飲むの好きなんですよ。しかしそこに山芋は見慣れない。うまいもんですねえ。

なんとくもこの冷製フライですって。温かいくもこの後に冷たいくもこですか。
本当に冷たい‥そして衣なのかコレは、やたらとうまいパン粉のようなフレーク状のものがまぶしてある。ザクザクっと来て冷たいくもこがトロリ‥はぇ〜、びっくりな美味しさだなあ。
温冷くもこと数の子チーズは鮨ノ蔵名物なんだそうです。まだ見ぬ面白ツマミはいくらでもあるのですね。

おつまみラストは珍味のちょこちょこ盛り。マスコ・タラコ万願寺あえ・メフン・むかごのガーリックバター。
いかにも北海道なマスコに京都らしい万願寺あえ!この二つで一合は軽いというのに、ユージロー・ハンマの好物メフン!そしてぼくの好物むかご!
むかごをガーリックバターで炒めると、こんなたくましい野の風味に溢れるのか‥!サケの背ワタの塩辛メフン、生臭みを凝縮しすぎたら旨味になっちゃったみたいな珍味中の珍味。石炭をユージローが全力で握ったらダイヤになる的な?

個性的な珍味が揃ったので、お酒も個性的なのあります?驚くほど甘いとか濃醇とか。
聞いたら出てきた、甲賀が誇る大甘大先生の笑四季!Sensationの黒は初めてだ。
いいですよ〜。このくらい甘味酸味が突き抜けたお酒なら、キャラ立ち揃いのツマミと真っ向勝負ができるというもの。

ガリが置かれ、いよいよ握りの開始となるようです。
新生姜なんだ〜と思っていたら、どうやら大将は新生姜首都である栃木の出と判明。なんだお隣さんじゃないですか。
海なし栃木の方がお寿司屋さん、しかも北海道の暖簾分け店を京都で‥どういう流れなんだろう。

握りの先鋒は明石の天然真鯛。いきなり白身の王様みたいのが出ちゃいますね。
キリッと締まった味の赤酢ご飯が白身を引き立てる。鮨ってなんてうまいんだろう。

なんとも美しいケンサキイカ。炙ったイカなんてそんな舟唄な‥いやはや、うまいイカですねえ。細かい包丁で甘味もグンとアップ!

氷見の寒ブリに自家製千枚漬け。霜降りどころか雪のような脂の寒ブリ。そこをスッキリ爽やかにする千枚漬けの力!コレ3つ4つもらえませんかね。

握りと言えばマグロだーっ!塩釜ホンマグロ赤身!赤身に赤酢、まさに鮨の醍醐味。グウの音も出ません。

キリリと切れる酸味が清々しいコハダを食べて落ち着くんだ。

兵庫香住のノドグロ炙り‥落ち着けるかっ!こんなの!しかし酢飯が美味しいですね。ノドグロの脂を受けて立ち、さらに旨味を加えてくれる。
札幌の鮨ノ蔵本店は炭火が使えない店舗なのでハンダゴテで炙るんですよ、なんて笑う大将。ハンダゴテ‥?その点では本店よりアドバンテージがあるわけですね。

ホッキ貝は塩とスダチで。貝の甘味も引き立てるご飯の程よい塩気。

満を持して登場の中トロ。ほどよい脂、いばらぬ煮切り、ワサビにご飯が一体となって‥ああ‥ぼくは今京都でお寿司を食べているんだなあ。

アカザエビ。え、おフランスで言うラングスティンを握りに?しかも茹でや生でなく炙りで!
コレがビックリ、ここ数年で食べたエビで一番エビの香りが強い。エビってこんな胸のすく香りがするものだったのか。エビと炭火両方の力がすごいのだな。

ウニトロ手巻きなんて、手巻き寿司で張りこんだ時に作ってしまう「俺が考えた最強の寿司」じゃないか。

「カニアレルギーの人でも大丈夫です」と出してくれた味噌汁。おかしい、どう味わってもエビやカニの風味がする。それも濃厚な。どういうこと?と聞いても笑って教えてくれませんでした。

玉子焼きのかわりにカタラーナでシメ。パリパリこってり素敵においしい‥あの〜、甘いもので焼酎を飲む変な癖があるんですが‥

アルコール44度(乙類焼酎上限)の爆弾ハナタレが登場。
初(ハナ)垂れということで、蒸留した最初の部分。昭和のガキンチョが鼻からぶらさげているアレではありませんよ。
大将「シメにハナタレ飲んで喜んでいる方も初めてですね」
いや〜、飲めば飲むほど蒸留酒が恋しくなって‥44度とは思えぬまろやかな口当たりですが、喉を通るとしっかり爆弾。うまいなハナタレ。
この辺で予約のお客さんが入ってきました。なんとまたもや栃木の方で、大将と地元トーク開始。大晦日、京都のお寿司屋さんで北関東の民が勢揃い‥こんな年越しもいいもんですね。
面白いおつまみの連発からご飯が美味しい握り。札幌の本店は本当に予約が取れないそうなので、京都のこちらには季節を変えて寄らせてもらおうかな。予約取れるのかな。
京都 鮨ノ蔵 京都府京都市東山区林下町434 EXIT祇園 1F