
キングオブ金沢のO尚さんにガイドしていただく二泊三日金沢くいだおれツアー、最終日となりました。満腹をはるかに超えた昨晩でしたが、寝て起きたらお腹が空いている脅威の小宇宙人体。
三日目のお昼を食べたら解散です。メシ食ってばっかりですが一応サイトシーイングなので、近江町市場でお土産を買ってから向かうとしましょう。同じく市場に行ったメンバーには「昼食前の軽い食事」として甘エビや生牡蠣を吸っていた豪の者もいたとか。
集合場所はホテル日航金沢のロビー‥東横インしか知らないぼくにはあまりにラグジュアリーな空間であった。

昼食会場は、ホテル6階にあります「弁慶 ホテル日航金沢」さん。
O尚「駅から近いので、金沢から帰る日のランチはここの寿司カウンターと決めているのです」
日本料理のお店だけど、お寿司の場合は専用のカウンターがあるわけですね。知らない世界だなあ。
O尚「カウンターの景色が素敵だから楽しみにしてね」
景色って、駅近くのホテルの6階で景観も何も‥

わーっ!中庭を作っちゃったのですか!こりゃ確かに素敵だ、すごいぜ日航。ところでホテルニッコーって日航だったんですね。北関東民なのでずーっと日光と脳内変換していました。
O尚「メニューだけど、本来ディナー用の2万円コースを特別にお願いしてあります」
また昼に夜コースの流れですか!ランチだから長くて90分と想定していたけど、絶対そんな枠では収まらないな‥新幹線の時間を変更しておこう。

着物姿もあでやかな店員さんに飲み物を聞かれます。加賀に来たので加賀鳶をください。ごく自然に昼からお酒を頼んでしまったけど、お寿司コースじゃ仕方ないよね。ぼく悪くない。

常きげんの山廃もあったのか。後で頼めばいい‥いや昼です。そんなには飲みません、たぶん。

うわ〜、美しいガラスの酒器で来たよ。和らぎ水も一緒に来るのはさすがホテルのレストラン。
ここで職人さんが挨拶をしてくれますが‥なんかO尚さん、親しげに話をしていますね。
O尚「前に来た時もこの方が握ってくれたのです」
おお、そうなんですね。美味しいからリピートしているわけで、その方が握ってくれるということは今日の美味しさ1リール確定。

先付けで出たのはもずく。いつのまにやら新物の季節でしたか。これでもかというシャキシャキ具合が気持ちいいったらありません。

お造りはナメラとカジキマグロの漬けと赤西貝。
ナメラは高級魚のキジハタ。熟成度が違うふた切れを楽しむことができます。
カジキマグロはあっさりしてお酒を呼びますねえ。
昭和天皇がおかわりしたという赤西貝は石川ご自慢の一品。ちっちゃい身に甘味が詰まりまくっています。

フグの白子を昆布締めにして、酢飯にのせて、キャビアをちょいと。ただでさえうまい白子にちょっとエンチャントが過ぎませんか?加賀鳶が猛スピードで減ってしまうじゃないの。

富山湾の宝石と名高い白エビ。かかっているのは‥?うわ〜!コノワタだ〜!好物に大好物を加わってしまった!これは罪深い肴ですよ。

パッと見はカツオ、正体はホンマグロの子、メジマグロ。炙っておろしポン酢なんて泣かせないでください。
赤さも脂もホンマグロ親分には及びませんが、清々しい香りと深い旨味は全く引けを取りません。うまい ヨコワ うまい。

いよいよ握りが始まりました。初手、コウイカ。イカ大好きな友人の方から変な声が聞こえたぞ。
なんともねっとりとした舌触りから溶け出す甘味‥海なしグンマではお目にかかれるはずもない極上のイカ。こりゃ変な声も出るわ。

こんな肴や握りを連発されては、杯が重なってしまうのもやむなし。SEVEN神泉に援軍を願いましょう。またまた綺麗な酒器ですねえ。

好物のサワラが出た!西日本に来た気がするぞ。西京焼きもいいけど、やっぱり生や炙りがうまいですよサワラ。

ここでちょっと肴に戻って、アンキモポン酢と金時草のおひたし。お隣のMさんがアンキモうまいとご満悦‥あれ、痛風の薬をほとんど持ってこなかったって聞きましたけど、昨夜の白子とか今食べているアンキモって、すごく‥すごいのでは。
Mさん「こんな美味しい物を前に気にするわけにはいきませんよ‥大丈夫、現代のエリクサーであるロキソニンがあります」
‥ただの痛み止めではく万能薬だったのか、知らなかった。あ、金時草のこっきりくっきりした歯ごたえがうま〜い。こんな爽やかな菜っ葉を食べれば色々リセットですね、たぶん。
Mさん「そう、野菜とロキソニンがあれば何も怖くありません」

富山湾の至宝ホタルイカはセミセルフの手巻きで登場。おおっと、これは茹でではなく炙りですか。肝の旨味が凝縮してとんでもないご馳走。
Mさん「このホタルイカはたまりませんね‥うまうま」
肝の旨さは罪の旨さ。そろそろロキソニンも届かない領域のような気もしますが、痛いのはぼくの足じゃないから気にしないでおこう。

みなさんに毛ガニがふるまわれたと思ったら、こちらだけクルマエビを出してもらえました。素晴らしい彩度、江戸前のワザだ。
4月になっても毛ガニはいるんだね。こうやって替わりを出してもらえるからいいけど。

職人さん「こちらが名物となります、ノドグロの蒸し寿司です。温かいお寿司は珍しいと思うんですけど、蒸すことで下のご飯にノドグロの味が染みます」
なるほど、そういうカラクリですか。ホカホカとした湯気から酢飯の香りがするのもすこしふしぎで楽しいね。
ちょうど真っ白になった頃合いの身がホロリと崩れて、下のご飯と絡まりあって、熱で脂の旨味が立って‥これはちょっと言葉にならない。ノドグロは炙りこそ至高と思っていたけど、ちょっと宗旨替えしましたすみません。

バイガイの肝で心を鎮めるのだ‥って、こんなうまいもので鎮まるかっ!肝だけとはなんと思い切ったことをけしからん。

と思ったら、肝からの握りと攻めこんできた〜!バイガイの握りは涼やかな香りとコリコリ景気の良い音も味のうち。

ウニは軍艦ではないのですね。穏やかな酸味の酢飯で、ただでさえ甘いウニの味が引き立つことと言ったらない。お寿司って偉大だよなあ、酢飯の上に魚介がのっているんだもの。

甘エビには卵と頭のミソまでついちゃって、甘くて美味くてプチプチで。

皮目が愛しいキンメだ〜うわ〜。
しかしこちらのお寿司はどれもツヤがすごい、トゥルットゥルですね。煮切りが塗ってあるから、だけでは済まない。卓越した包丁により地肌のキメが細かいとか、そんな理由もあるのでしょう。

ついにお出ましはホンマグロの大先生。しかも10日間寝かせた中トロだそうです。熟成によって、旨味だけでなくホンマグロらしい香りまでパワーアップしてしまうのですね。本当に、本当にお寿司っておいしい。

見慣れぬ姿のあなたはだあれ?なんと太刀魚!またまた大好物の登場じゃないか。炙った皮目を裏にしてあるので見た目では分かりませんでした。
素晴らしく締まった身にすごい旨味。なんでも昆布で1日締めてから炙ったそうで‥なんと手が込んだアコギ太刀魚。
しかもホラ、太刀魚ってパラッパラッパーみたいに薄いはずなのにこの厚み。元はどんな大物なんだろ。

トロリと見事な煮アナゴ。このツメのために何匹分の骨が使われているのやら‥
職人さん「これでコースの握りは一通りとなります。後は巻き物と玉子ですが、何かお好きなものがあれば追加で握りましょうか」
O尚「大トロを‥熟成と新鮮なもの両方をお願いできますか?」
そ、それはなんと罪深い‥ぼくもマネしようかしらと思ったけれど、昨日からサバを食べていない気がする、サバ。ここまで好物が続いたら大好物で締めよう。

締めたか締めていないか、ギリギリの酢はピッカピカのサバである証。めちゃめちゃうめえ、青魚の極みだ‥!
O尚の前ではトロのブロックが置かれ、良い所だけ切り分けるとか無茶をしております。カウンターの醍醐味を全力で味わっていますね〜。
Mさん「ぼ、ぼくもトロの食べ比べを‥」
昼から飛ばすなあ。まあこの旅ラストだし景気良く行きましょう。

巻き物は野菜と玉子とかんぴょうの太巻き。ぼくの所に端っこの具だくさんが来たぞ。向田邦子先生に倣って端っこ好きなので随喜の涙。
イクラと梅肉で別々の風味を加えているのも楽しいですね。こんな太巻きを運動会のお弁当にしたら一等賞は疑いなし。

最後に甘く分厚い玉子が出るのが江戸前っぽくてうれしい。

味噌汁はノドグロを何時間も溶けるほど煮込んだけしからんモノ。もはや味噌汁というよりエキスであった。
11時半からおおむね3時間、じっくりしっかり楽しませていただきました。さすがホテルのレストラン。地元の食材をものすごく高いレベルで、クセなく誰もが楽しめる味わいに仕上げてあります。そして売りである蒸し寿司のうまさよ‥ぼくもO尚のマネして、金沢の帰りはここにしようかな。
二泊三日のくいだおれツアー、全行程の予約から何から全てやってくれたO尚さん、ありがとうございました。また催行するならぜひ呼んでください。
‥加賀屋さんが復活を遂げた暁には、一泊目金沢で二泊目に加賀屋さんという手もあるな‥とにかくうまい店ばかりの北陸、みんな行こう。
弁慶 ホテル日航金沢 石川県金沢市本町2-15-1 ホテル日航金沢 6F