
京都くいだおれ二日目の夜。昨夜は和食で日本酒だったので今夜はフレンチでワインです。バチ当たりです。
目的地は丸太町駅近くなのですが、東洞院通りのなんとも説明しにくい所‥こんな時にタクシーアプリは便利だね。住所ビタ止めでお願いできちゃうからね。

ビタっと止まってくれたのはいいですが‥店はどこだ!あ、この門ですか。
本日のお店はこの小路の先にある「Synager」さんです。読み方は「シナジェ」らしい。
友人「あれ?今日雨降ったんだ」
一日ずっと晴れでしたよ?ああ、お店に続く石畳がしっとりと濡れているから‥これは打ち水というのですよ。

昔は蔵とか造り酒屋だったのでしょうか、天井が高い建物は雰囲気満点。そんな空間に三卓だけという贅沢な配置です。壁に近い四人用のテーブルに案内していただきました。
傍の棚には花が飾られ、ズラリと並ぶのはマディラワイン。小玉スイカやバターナッツカボチャのような置物もあるね。いや、よく見たらホンモノだ。

卓上には今宵のメニューとナプキンが。なんとシャレオツなお店だ‥普段は着ないジャケットをはおってきて良かった。黒ジャケ黒シャツ黒パンなので怪しげなのは変わりませんが。
コースは一種、ドリンクペアリング付きコースのみとなります。昼11,000円・夜22,000円だったかな。
ペアリングはワイン中心かハーブティー中心のノンアルコールか選べますので、言うまでもなくアルコールでお願いしました。

まずはお店で蒸留したというバラの芳香水。グラスを傾ける前からあふれるバラの香り!究極対至高の水対決で雄山が出したバラの朝露はこんなでしょうか。いや、この濃厚な香りはアレだ‥花山薫が母に捧げたバラの化粧水だ。
香りや音、色彩や温度感など五感に訴えるメニューという触れ込み通り、いきなり強烈な一発をもらいましたよ。

アルコールペアリングの一杯目はシャンパーニュ。銘柄は聞かなかったので知りませんが、涼やかな泡立ちとトーストの香りで大変美味しゅうございました。

だからと言っていっぺんで飲み干してしまうワケにもいかない。シャンパーニュと合わせる「小さな楽しみ」がこんなに出ちゃったからね。
「小さな」とはサイズの話で、数ではないから決してウソではない‥けど、なんだかコメダ的ナイス逆詐欺じゃない?

ばあく豚の肉と豚足。なんとなく沖縄な風味を感じる一品に咲く可憐な花一輪。もちろん食用花です。

イベリコ豚のチョリソとケールのフリット。チョリソと言っても辛くはない、赤味は唐辛子ならぬパプリカですかね。これはツマミに好適すぎて、泡の分配が激ムズになってきたぞ。

イチジクとモッツァレラ。イチジクって果物の中ではダントツにツマミ側と勝手に思っているのですが、チーズと合わせると明らかですね。
向田邦子先生がイチジクをブランデーだかウイスキーだかで煮ていたのをいつかやってみたいのですが‥イチジクをツマミに飲んじゃうよね、ウイスキー‥

ホンモノのサンゴにのって登場した、白い花のようなものは‥なんとハモのフリット!京都のフレンチだなあ〜。花芯は柚子風味のかぐら南蛮で、つまり柚子胡椒の辛味抜きということだな。
もちろん小骨の存在すらわからぬ完璧な骨切り。和とフレンチの技の融合で、見た目も味も素晴らしい逸品です。

「小さな楽しみ」がもう一皿出てきた!お店の人すら「小さくもないんですけど」と笑っているじゃないか。
甘エビとリコッタチーズがメインで枝豆・トマト・ウニが加わり、海と畑の恵みがぎっちり。枝豆がフル・オブ・豆な風味でウニにも負けない。こいつは泡と素敵に調和するでしょうな‥残っていたなら。

二杯目はイタリアの白だそうです。キリッとした酸とカッチリした鉱物を感じてサカナを呼びそう。覚えておきたいからボトル見せてほしいぞ。

自家製のパンはホカホカどころか熱々だ。綺麗なお花はヨーグルトを使った発酵バターですって。これが美しいだけでなくうまくて、ちょっとちぎったパンにたっぷり塗っちゃう。

ホタテときゅうりのカルパッチョ キャビア バターミルクとバジルのソース。ミントや穂紫蘇がさらに香りを重ねます。
キャビアの塩気だけでも、バターミルクなのに爽やか極まりないソースをたっぷりつけてもおいしいホタテ。シャリっと顔を出すきゅうりの食感もをかし。

これまたイタリアの白らしいですが、香り豊かで芳醇ですねえ。う〜む好きだ。

バラのタルティーヌ。ライ麦パンとサワークリームの上に信州サーモンが乗り、さらに海ぶどうとバラがふりかかる絵画的なお皿。ピンクのソースはバラドレッシングと、どこまでもお花畑です。
ライ麦パンとサワークリームとサーモン。ものすごく端的に言えばサーモンのオープンサンドなので、見たことのないビジュアルながらも馴染みのある美味しさ‥おっと、油断しているとサーモンの間からピリリと粒胡椒が。
バラの香りに海ぶどうの面白テクスチャに‥まさに五感に訴えるスペシャリテだ。
もう一組のお客への説明を盗み聞きすると、あちらはサーモンでなくカニらしい。カニさんが花束を抱えている格好になるのかな?食べられないけど見てみたくはある。

次の料理に向けたワインは‥今度は国も聞かなかったけど、おフランスはブルゴーニュのシャルドネではないかと思います。たぶん。りんごや桃などフルーツバスケットのように豊かな香り。

お皿は野菜の炭スモークです。土をイメージしたブラックオリーブがふりかかり、モロマッジョというもろみを使ったチーズが添えられます。好みでタプナードをつけながら。
そんな大袈裟に味がついているわけでもないのに、野菜ってこんなにうまいものなのか。チーズも野菜に負けずパワフルでいいね。
大地パワーと牛さんパワーに切れるシャルドネ。トニオさんの料理のように健康になってしまいそうだ。

次は魚のようですが、赤いのが出た。聞けば納得のポルトガルワイン。世界に冠たる海洋王国はおひさまをたっぷり浴びたワインで魚を食べるんですもんね。

出ましたお皿はウロコをパリッと焼き上げた甘鯛‥甘鯛?ポルトガルでもなんでも赤で大丈夫かな?
甘鯛の下にはレンコンと舞茸、そしてサマートリュフが敷かれ、トドメに上から注がれたのは‥スペインの至宝・ハモンセラーノで取ったスープ!なるほど〜、疾風怒濤の勢いでワインに寄ってしまいましたよ。
トリュフが素敵に香り、甘鯛が軽快な音を立て、レンコンはシャッキリと舞茸はこっくりと、ハモンセラーノがとんでもない旨味を‥やはり恐ろしいほどに五感を刺激する!いやめちゃめちゃうまいなこのお皿。

次も赤でメルロー主体だそうです。つまりボルドーか。お肉の時間か。

母が短角牛、父が黒毛和牛。京丹後の至宝たんかく牛!しかも部位はシュハスコのメインとして有名なイチボですって。
赤身のしっかりした歯ごたえと旨味は母譲りでしょうか。圧倒的シモフリの純粋黒毛和牛より好みかもしれん。
そして一滴も残せぬおいしさ、エシャロットの赤ワインソース。残しておいたパンの出番だ!

食後はコーヒーでなく、西陣たま茶さんのハーブティーだそうです。しかも茶葉の香りを試してから選ばせてくれるとはなんと楽しい。
野生のライオンはタンポポベース‥ああなるほど、ダンデライオン。眠りを誘いそうな穏やかな香りは羊の時ですか。結局お願いしたのは雪肌美人。スカッとさっぱりした香りが良かった。
おしゃれなだけでなくボリュームも中々のもの、まあデセールくらいは入るかな〜というところで、シェフ自らワゴンを持っての登場です。なんだろう?

シェフ「チーズはいかがですか?お腹いっぱいかもしれないので少しずつ切ることもできますが」
聞けば和歌山のコパン・ドゥ・フロマージュさんの特別なチーズたち!それはもう、7種全部切ってください!‥少〜しだけ。

フランスやイタリアのナチュラルチーズに和歌山食材の風味を加える「チーズ洗練士」の手による、全く新しい味わいのチーズたち。
赤山椒パルミジャーノやナイアガラワインの澱で仕上げたブルーチーズ‥なんだこれ、ワインもいいけど日本酒やウイスキーもアリでは?

シェフ「マディラワインも素晴らしく合いますので、ぜひお試しください」
ぎゃー!お試します、お試させてください!
お店オリジナルのアマゾンカカオジャムをブルーチーズにつけると、甘味と発酵の効いた塩気が絶妙どころの話じゃない。トドメにもったりと甘いマディラワイン‥いかん、クセになりそう‥否、なった!帰ってからすぐ和歌山からチーズをお取り寄せ、ついでにマディラワインもお取り寄せしました。

大和橘のアイスとマクワウリ、上に白ワインゼリー。古めきしずかな柑橘風味の大和橘、素朴なメロンといったマクワウリ。不思議なくらい和のスイーツとなっております。

先ほど葉を選んだ雪肌美人が登場。ローズヒップのビタミンCが雪肌の秘密?甘酸っぱい味と華やかな風味でなんだかジャムサンドがほしくなる。

お茶用の小菓子もちっちゃいながら4つも出ます。大和橘のキャラメル・ヘーゼルナッツのキャラメリゼ・大和橘風味のフィナンシェ・ほうじ茶ミニカヌレ。

(友人撮影)
カヌレうま〜いといただいていたところ、通常サイズのカヌレをお土産としていただいてしまいました。そしてご不浄に行く時見つけたカヌレ猫‥どうやらカヌレは売りの一つなんだな。
五感に刺激いっぱい、お腹もいっぱい。素晴らしい時間でした。京都といえば和食!と決めつけないで、フレンチやイタリアンの探索もしなくてはいけませんね。その前に‥季節を変えてまたSynagerさんを訪れなければウソだな。
Synager(シナジェ) 京都府京都市中京区壺屋町512-2