目の前でのライブ包丁から次々と繰り出される美酒佳肴!カウンターの全員が幸せになる桃源郷が東山にありました 佳肴 岡もと(東山区・五条駅)

古都でつけものランチをいただいて、ホテルにチェックインしてゴロゴロ・・実はこのホテルも今回の目的の一つです。

居心地の良さに寝落ちしそうなところで夕食の時間が近づいた。お店までおおむね3キロなのでタクシーで向かいます。

やって来たのはフォーシーズンズホテルの近く、馬町交差点を東側に入ってちょいちょいにあります「佳肴 岡もと」さんです。あまりにひっそりとした佇まいで、一度通りすぎてしまいました。

最近お世話になっている有名ガイドブックで毎年星を獲得しているそうです。こんなひっそりしたお店まですぐ見つけるんだからね、すごいよあの本。

店内に入ると厨房を囲むようなL字型カウンター7・8席のみ。一番端の席をうながされ・・というか、他はすでに満席だ。6時半に予約したけど、他の方々は6時スタートだった模様です。

メニューはなし、アレルギーや苦手な食材を伝えてのおまかせコース一本。座るとまず飲み物を聞かれます。日本酒はどんなのがありますか?

大将「いつも60本くらいあるんで書ききれないもので。辛いとか甘いとか芳醇とかお好みを言っていただければ、オススメを何本かお見せしますので」

なんとなんと、一番嬉しいスタイルじゃないですか。ぜひ芳醇な感じを・・と言ったらドンドンドンと3本くらい置かれまして、やや、雁木のムロナマゲン!くださーい!

大将「お猪口とグラスとどちらにします?なんならジョッキでも」

「え、もちろんジョッキで!」と答えたら店内に笑いのさざなみが。え!もしかしてジョッキを出してみせるのは大将の持ちネタだったのか。

大将「いきなり注目の的ですね」

いやはや、ユーモアを解せず申し訳ない・・とりあえず小さめグラスでかんぱ〜い。

最初の一品は風呂吹き大根かな?と思ったら違う。いかにも京都な海老芋に、なんとへしこの餡

へしこといえばサバのぬか漬け、クセの強さに定評のあるわけですが・・何コレ?深い旨味と爽やかな香り!へしこの旨いトコがしっかり抽出されている。ぽっくりトロリな海老芋と合わせてお酒が輝くんですけど!雁木おかわり!

お次は伊勢海老の黄身酢がけ、上には自家製いくら、下にはエビの出汁をたっぷり吸わせたかぶらですって。

大将「上のトゲトゲはブラックタイガーじゃないぞってアピールですからね。食べたら血まみれですよ」

弾けるような伊勢海老といくらがとんでもねーのはもちろんですが、海老の旨味を吸い尽くしたかぶらが大変なことになっている・・!

この辺で2回ほど雁木をおかわりしましたら、とうとう本当にビアタンブラーでお酒が出るようになってしまいました。

目の前で鱧の骨切りが始まりました。ものすごいスピード、均一な切り幅!カウンター席だけだからこそ楽しめるライブ神技!調理そのものがエンターテインメントです。

その鱧はあえて王道の組み合わせ、和歌山産の松茸という豪華版!パカっと開けた時の香りに目がくらんで、写真を撮る前に箸をつけてしまいましたとも。まあご立派な松茸でアイキャッチ画像にピッタリだったのになあ。

ああ、放心するほどウマい・・鱧と松茸・・やはり王道、とんでもない組み合わせよな。

大将「松茸豊作ってニュースは困ります。秋だから出さないわけにいかないけどホント高くて・・がんばって和歌山のを仕入れました」

そういえば午前中に錦市場を通ったら一本も見ませんでした。走りだけだったのかしら。

お造りはなんとにしんの炙り、上にかかるのは紅玉りんごのおろしという、北の力を感じる素晴らしい組み合わせ。

京都といえば身欠きニシンのはずが、まさかの炙りとは。いただいてみると清澄という言葉がふさわしい、軽やかな旨味の結晶体!こんなに澄んだアブラってある?紅玉の甘酸っぱさで爽やかさがさらに倍!

鰯のから煮は骨ごとほっくり。まろやかな酢の風味と表面にまぶされた鰹節のウマさ、まさに佳肴というところで店名に偽りなし。

佳い肴すぎて一品ごとにお酒を空けてしまう勢いで、ちょっと画像を載せきらない。美酒の設計・尾瀬の雪どけ・鳳凰美田・高津川・玉川あたりを飲んだみたいです。

お揚げさんと小松菜のおばんざいは干し海老の出汁で。素晴らしく染みた出汁は急冷するのがコツだそうですが、きっとマネできません。

明石の新イカには蒸しウニをのせて。新イカ、つまりちっちゃいイカの新子でまさに秋口だけの味。まったく二チャリとしない歯切れの良さがたまりません。そこにウニの旨味が来てしまっては・・こんなだから飲みすぎちゃうんですよもう。

レンゲで出て来たのは汲みあげ湯波、上には生からすみと来たもんですよ。ねっとり舌にまとわりついて粒々がほどけていく・・うう、何度「佳肴〜!」と心で叫ばせる気なんだ。

なんかプシューと不穏な音が出てきました。ほうほう、瞬燻というかそんな感じなのでしょうか?

さっと煙の香りをまとった明石の一本釣りサワラが登場です。下には松茸・銀杏・大麦が敷かれ、上には自家製梅干しがのるという風味佳味の多重奏。大麦のムギュ感と松茸のシャキ、松茸と銀杏の香り、柔らかい酸味の梅・・主役級のメンバーが肩を組んでセンターのサワラを押しあげに推しあげるのよ!

ウマさの波状攻撃でフラフラなところでシメの食事モードに突入・・おわ〜!鯖寿司がドカンと来た!片方はご飯に実山椒が、もう一つは塩だけで漬けた柴漬けが入ります。

サバとメシと薬味が渾然一体、京都に古くから伝わる鯖寿司とはちょいと違うようで、実はしっかり引き継いでいる。わかりにくく言えば、サンデーサイレンス系がディープインパクト系に引き継がれたような。

端的に言うと、両方一本ずつ持ち帰りたい。

ここで!さらに!ひと口麺が、出た!なんと酒飲みのツボを知りつくしているのでしょう。シャポーン鹿児島鶏の出汁に気仙沼のふかひれがたゆたうヌードルスープ。ずーっと日本酒でしたが、この辺で思わず芋焼酎を所望しました。いつもシメは焼酎なもんで、はい。

デザートモードも独創性が止まりません。ラ・フランスの白ワイン炊きブランデー仕上げにはザクロとスイートバジルがちらほらと。ブランデーをちびっと舐めながらいただきたい、極めて上品なシメ・・え、シメはまだあるの?

目の前で生地をちぎって餡をくるんでふかしはじめる!シメのライブ饅頭蒸しなんて初めて見たよ。

出来上がりましたのは、利平栗と和三盆の餡入り黒ごま饅頭。ほやほやと湯気の立つところにバフーと食らいつく!鼻に抜ける栗とゴマの香り、舌に涼やかな和三盆の甘味、蒸し立てらしくむっちりした皮!これは間違いなく人生で一番ウマい饅頭です。饅頭が怖くなるレベルです。

そしてお茶が怖い頃合いにしっかり熱いものを出してくれます。素晴らしい晩酌、これにて終了。

お酒の底が近づけば「次はどうしましょう」と2・3本見せてくれ、都度和らぎ水を注いでくれ、面白ウンチクたっぷりの説明にライブで魅せる調理・・カウンターのお客さんみんなが幸せそうにニコニコしていますよ。ここは毎日が日本酒のオクトーバーフェストなんだな。

メニューはおすすめコースのみ、14,000円くらいなのかな。そしてバカみたいにお酒を飲んだのになんと合計で2万ちょいちょい。思わず「え?安すぎませんか?」と言ってしまいました。良心的なんてもんじゃないぞ。

こんな素敵なお店、どうするのかと言うと

実はもう次回の予約済みなんです。

佳肴 岡もと 京都府京都市東山区常盤町470-4

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